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エピソードを通じた感動と実感を伴う伝承法
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クレームの分析と社員へのフィードバックが、気働きという〝伝えにくいもの〟を伝えるための第一の方法だとすれば、第二の方法が気働きの具体例をエピソードの形で伝承しているということだ。例えば長子さんは、新人に対して事あるごとに次のようなエピソードを語って聞かせている。
「ある家族のお座敷の世話をしていると、電話器の横におじいさんの写真が置いてありました。それを見て、本当はこのおじいさんもいっしょに加賀屋に宿泊する予定だったのにお亡くなりになったのだと気付き、黙って一膳多く据えると、家族全員が感激してくださいました」
気働きの本質が〝臨機応変の気遣い〟だとすれば、それを公式のように決まった形で伝えることは不可能だ。しかし、こうしたエピソードとして語ることによって、気働きを発揮する間合いや、客が何に感激するのかを直感的に理解させることができる。そこに感動という要素が加わることによって、気働きは、新人の血肉となって定着していくのではないだろうか。
加賀屋では新入社員研修の座学でも、いくつものエピソードが幹部の口から語られる。ある新人がこんな話を披露してくれた。
「常備していない県外の銘柄の日本酒をお客様がご注文になったとき、『置いておりません』と答えずに、即座に車を飛ばして県外まで買いに走ったという専務の話を聞いて、加賀屋はそこまでやるのかと驚きました」 |
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