未来をつくる大学の研究室 「柔らかい物質」の特性を解明し新機能材料開発へ道筋をつける
藤井邦治

藤井邦治さん

Fujii Kuniharu
千葉大大学院自然科学研究科、多様性科学専攻博士後期課程3年
〈岡山県・私立金光学園中学高校卒業〉

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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大学院生が語る

周囲とのコミュニケーションが
よい成果につながる

Q:なぜこの分野に進んだのですか?

A:高校時代、唯一好きだった科目が物理でした。身のまわりで起きていることをきちんと理論的に説明できる。その一方で、極小の素粒子から無限の宇宙空間まで、非日常的な世界も研究の対象とするダイナミックさがある。とにかく物理が勉強したい――。そんな思いから、千葉大の物質工学科に進みました。
 上野先生の研究室を選んだのは、研究室見学のときに、先輩がとても楽しそうに実験機器について説明してくれたのが、印象に残ったからです。デモンストレーションとして実験を見せてもらった装置は、今、自身の研究に活用しています。「エネルギー損失分光装置」という実験機器で、固体表面に低速電子線を照射することで、表面で散乱されエネルギーを失った電子を計測するものです。私はこの装置を使い、分子の振動そのものを調べています。

Q:研究を進める上で大変なことはありますか?

A:実験装置のトラブルが発生したときです。実験では、真空という特殊な環境をつくらなければなりません。しかし、外から見ただけでは、装置の中が質のよい真空状態になっているかどうか、機材に汚れが付着しているかどうかがわかりません。装置の状態を目で見て見当をつけたり、消去法で問題を一つずつつぶしていったりして解決していきます。メンテナンスをしっかりしなければ、有効な結果は出ないとつくづく感じます。
 コミュニケーションの大切さも、研究室で学んだことの一つです。機器についての知識不足から、自分では解決できない問題もたくさんあります。普段から周囲の人と言葉を交わしたり、相手が困っているときは進んで助けたりしなければ、いざというときにだれも自分を助けてくれません。人に話を伝える、人の話を聞く。どこの世界でも同じだと思いますが、周囲としっかりコミュニケーションをとることは、よい成果を上げるために欠かせない要素だと思います。

Q:高校生へのメッセージをお願いします

A:私は高校時代、あまり勉強が好きな方ではありませんでした。それよりも、友だちといる時間が楽しくて、悩みを相談し合ったり、勉強を教え合ったりしたことを覚えています。
 いま思えば、そういう時間を持てたことは、自分の成長にとても役立ったように思います。ときに助け合い、ときにライバル心を燃やす中で、辛い受験勉強も乗り越えられましたし、私自身、大人になっていくことができたような気がするからです。受験勉強はもちろん重要ですが、友だちと過ごす時間も大切にしてください。
 もう一つ重要だと思うのは、身のまわりのことに対して、常に疑問を持つことです。当たり前のことを当たり前だと思って流してしまわずに、「なぜこうなるのだろう」と常に疑う視点を持つ。そうすれば、知ることの楽しさをより実感できると思います。
 好奇心の一つひとつが、自分を高めてくれる道しるべになるという気持ちをもって、改めてまわりを見回してみてはどうでしょうか。
図

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