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取り組みの連関性を意識して内容や順序を改める |
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ディベートさえ行えば、生徒のコミュニケーション力が高まるわけではない。かつては、ディベートで活発に意見を戦わせる生徒たちなのに生徒集会では消極的すぎて、教師がギャップを感じることも多かったという。その原因を「ディベートはディベート、生徒会活動は生徒会活動と、取り組みを主導する教師が切り分けて考えていたから」と、黒木先生は分析する。
「一つひとつの取り組みはしっかりできているけれども効果が出ないのは、取り組みの連関性が弱かったからだと思います。KIプロジェクトでも、それぞれの取り組みが相互に関連付けられたり、ほかの学校行事や授業に波及したりした時、あるいは1~3年次の連続性が保たれたときに、特に効果が表れていると感じます。3年間でどのような生徒を育てるのか、学年団がきちんと目線を合わせ、個々の取り組みを単発で終わらせないよう工夫することが、進路指導を成功させる最大のポイントだと実感しています」
例えば、09年度の1年生では、「先輩に学ぶ私たちの進路セミナー」に先立ち、ディベートで「OB・OGを訪問するのは是か非か」というテーマの論戦を行い、職場訪問について考えさせた。朝礼やLHR、学年会などで生徒に語り掛ける場面でも工夫している。
「見えない自立の芽を育てようと、教師が常に意識することが大切です。例えば、教師が生徒集団に語り掛ける時も、『みんな』にではなく『君』に話しているのだと伝えます。みんなに話してしまうと、生徒はひとごとのように聞いてしまいますが、一人ひとりに語り掛けることによって、生徒は教師の話を自分のこととして受け止め、議題に対する自分自身の意見を持つようになります。集団における自分の立ち位置や役割を考えるきっかけとなり、自立にもつながっていくのではないでしょうか」(福永先生)
KIプロジェクトが一定の成果を収めた今、同校では原点に立ち返り、授業の質を見直そうという機運が高まっている。その理由の1つに、教科の魅力を高めることで幅広い学部・学科に興味・関心を広げられるのではないかということがある。もう1つには、KIプロジェクトによって醸成された高い進路志望を実現するには、質の高い授業で学力を引き上げる必要があるということだ。生徒の志望に見合った学力を付けなければ、KIプロジェクト自体は単なる理想で終わってしまう。
KIプロジェクトの個々の活動で芽生えた自立の芽を、授業で更に伸ばしていく――。そうした取り組み相互の連関性を高め、教師自身が取り組み全体をコーディネートする力が、今後一層問われることになりそうだ。 |
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