30代教師の情熱
いちかわ・まさと

いちかわ・まさと

教職歴8年。茨城県立土浦第一高校に赴任して3年目。講師を2年間経験し、茨城県立日立工業高校に5年間勤務後、30歳の時に母校である同校に赴任。担当教科は国語。1学年担任。


茨城県立土浦第一高校

◎1897(明治30)年開校。55分授業、月2回の土曜講座を展開。3年進級時に文理コース分けを行う。
◎教員数…69人 ◎1学年生徒数…約320人 ◎2009年度入試合格実績(現浪計)…国公立大は、東北大27人、筑波大38人、東京大16人、一橋大11人、東京工業大13人、京都大5人など計176人が合格。私立大は、慶應義塾大、東京理科大、明治大、早稲田大などに延べ714人が合格。

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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30代教師の情熱 学校を活性化させる『30代』は、何に悩み、何を課題と感じているのか

生徒と協働して、
「遊び」を取り入れた質の高い授業を目指す

茨城県立土浦第一高校教諭 市川真人

異動は効果的な研修の一つだ。
進路多様校から県下有数の進学校に赴任した市川真人先生は、レベルの高い授業をしようと必死だった。
しかし、目の前には、国語の楽しさを感じられず授業に集中していない生徒がいた――。
今、考えさせる授業を目指し、試行錯誤を積み重ねる。

かつての私
進路多様校と進学校のギャップから授業で必死に教え込む

 3年前、茨城県立土浦第一高校に異動が決まった時は、期待とプレッシャーでいっぱいでした。卒業後の進路は就職が中心という工業高校から、赴任2校目で東京大合格者数が毎年2桁という県内トップクラスの進学校に――。母校への赴任はうれしい半面、かつて自分が受けていたような授業を、今の自分に出来るのだろうかという不安がありました。
 初年度に受け持ったのは2年生でした。担当教科の国語科には3年間の指導の流れが定められており、初めて赴任した教師でもそれに沿って、先輩の先生方から助言を受けていれば、授業が出来るようになっていました。しかし、指導法自体は一人ひとりの教師に任せられており、生徒からはレベルの高い質問も受けます。私は毎日、必死で授業の準備をしました。次の授業の予習をノートにびっしり書き、その通りに授業を進めていったのです。
 ところが、授業では手応えがあまり感じられず、生徒の集中していない様子が見て取れます。現代文の授業で、問題に対する解答をを板書させても、前後の文章の流れを無視して答えだけを書く生徒が目立ち、生徒に考えさせることが出来ていないのは明らかでした。
 授業後は、「なぜかうまくいかない」「何かがしっくりこない」という思いの連続でした。生徒はなぜ授業に集中出来ないのだろうか。そう何度も考えているうちに、生徒を見ていない自分に気付きました。
 「難関国公立大に合格させるには、これだけは教えなければならない」、そう思っていた私は、授業の準備とそれを教え込むことに必死になり、自分の話に対してどのような反応を示しているのか、授業中の生徒の様子に目配りが足りなかったのです。
 私は生徒の様子を知りたいと思い、授業後はなるべく教室に残り、生徒と雑談をしたり、掃除や休み時間にも話をするようにしました。すると、少しずつ、授業に集中する生徒が増えていくのを感じました。生徒との信頼関係が教科指導の上でも鍵となる、ということを学んだのです。

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