大学生の学力保証と高校での指導改善などに活用するための「高大接続テスト」(仮称)に関する議論が進んでいる。 文部科学省委託調査「高等学校段階の学力を客観的に把握・活用できる新たな仕組みに関する調査研究」の代表を務める北海道大佐々木隆生教授と4人の高校教師に、「高大接続テスト」に求められる役割、可能性について議論していただいた。
2008年12月の中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」を受け、「高大接続テスト」(仮称ー以下略)に関する研究の必要性から、「高等学校段階の学力を客観的に把握・活用できる新たな仕組みに関する調査研究」(以下、「高大接続の協議・研究」)がスタートした。 9月末時点までの検討の経緯などを、北海道大・佐々木隆生教授に説明してもらった。
近年、高校生・大学生の基礎学力が不足し、高大接続機能が低下している。その理由として挙げられるのは、(1)「大学ユニバーサル化」(注1)時代を迎え、一部の大学を除き大学入試の選抜機能が低下。(2)高校の教育課程の弾力化による未履修科目の増加。(3)受験競争の緩和や非学力入試の拡大による高校生の学習意欲の低下の三つだ。 これらの問題を解決する一つの手段として、高校と大学関係者から提案されたのが「高大接続テスト」である。
大学入試センター試験のような選抜目的で実施されている集団準拠型の試験とは異なり、目標準拠型(注2)の達成度を測るテストを想定している。高大接続を円滑にするために、高校段階での学習の達成度を測る性格を持つものとして考えられている。
国立大学協会4人、公立大学協会1人、日本私立大学連盟2人、私立大学協会2人、全国高等学校長協会長はじめ高校長5人、全国高等学校PTA連合会1人、都道府県教育長協議会1人、初中等教育研究者2人、大学入試センター2人、有識者2人の22人から構成されている。
「高大接続テスト」の基本的な性格と今後検討すべき基本的方向を確認、関係団体の研究報告に基づいた研究、「内外調査」を実施し、10年秋に文部科学省に対して報告予定。テスト実施の有無、実施時期、受験対象は、9月末時点では未定。
*注1 M・トロウが提唱。大学進学率が同一年齢層の50%を超えた段階を指す
*注2 学習内容毎に評価規準を定め、その規準に対する達成度を評価