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特集●地域で進む教育改革(2)

三町 章指導室長
東京都荒川区教育委員会・三町 章指導室長
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調査結果は振り返りの材料。
学校独自の取り組みや提案を 区教委が支援していく

「学力低下」の声を受けて、自治体独自で調査・検証する動きが活発になっているが、東京都荒川区教育委員会は、今年二月、区立の全小・中学生対象に学力調査を実施。六月には学校別の到達度を含めた結果を区のホームページにいち早く公表したことで、マスコミでも取り上げられた。
同教委の三町章指導室長にその背景などをうかがった。
区を挙げて教育に期待している
 荒川区長は「七つの安心社会」という政策を掲げていますが、その柱の一つが「教育安心社会」なのです。習熟度別学習や英語教育、IT教育の推進などと並んで、「学力向上のための調査の実施」という事業が盛り込まれ、それに基づいて実施したわけです。
 荒川区は、東京都内でも少子高齢化がいち早く進み、一九七〇年代から、学校の規模が小さくなったり統廃合が進行している地域です。そうした背景から区民の教育改革への期待は高く、区長の施策も区民の声を背にしています。
学力調査は、目標への到達度で示した
 学力調査は、教科ごとに「基礎」と「応用・発展」に分け、それぞれに区独自の目標値を設定。それに到達しているかどうかをみました。目標値への達成率は、分野ごと、観点ごと、設問ごとに示し、どこが弱い部分かがわかるようにしました。かつてのテストのように、学級平均や点数の分布は出しません。結果はあくまでも、子どもや教師が振り返る材料として出しました。
 達成率を学校別に公表したことがマスコミで話題になりましたが、それはデータの一部に過ぎません。荒川区では学校選択制を実施していますから、学校を選ぶときの一つの判断材料にはなると思います。選択の判断になる情報はたくさん出していますので、保護者は今回の結果だけで選ぶということにはならないでしょう。
特色化の提案をシビアに吟味して予算化する
 荒川区の教育改革の基本理念は、「平等主義を脱した個性を生かす教育」です。今年度までに、中学校全学年の数学と英語、小学校の三年生以上の算数・国語に習熟度別学習を導入しました。
 そうした全区一斉のサービスをする一方で、各学校の特色ある学校づくりを応援しています。例えば、国際理解教育に実績のある学校の、さらに自国文化理解にも力を入れたいという提案を受けて、雅楽器購入に独自の予算を組みました。またある学校では、英語教育をさらに充実させるために、ALTが加わった授業を週二回実施する予算を組みました。この“特色化”の提案は、これまでの実績も加味して、教委でシビアに吟味したうえで予算化されます。
 今回の学力調査を受け、学校が次年度に向けて、独自の学力向上策を立ててくることを期待しています。(談)

*東京都荒川区のホームページ http://www.city.arakawa.tokyo.jp/
 
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