ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
教科と総合的学習の有機的連携を図り、学習効果を高める

京都府京都市立 朱雀第二小学校
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町全体が子どもたちの学校
 朱雀二小は二〇〇二年度、京都市教育委員会の「二十一世紀の学校づくり推進校」に指定された。そこで、重点的な取り組みを始めたのが「総合的な学習の時間」(以下、総合的学習)だった。
「(着任にあたり)保護者の方々と教育方針について語り合う機会を持った。そこでは『成績至上主義より全人的教育を』という声が主流だった」
と村田隆司校長は言う。
 卒業生のほとんどが地域の公立中学校に進学し、私立受験を希望する子ども・保護者は一割に満たないという地域特性が、こうした気風を生んでいるのだろう。
 そしてその全人的教育と「生きる力」を養うという観点に最も適しているのが、「総合的学習」だった。
 学年単位、学校全体で何度か議論を繰り返し、三年で地域、四年で福祉、五年で環境、六年で国際理解とテーマを決めた。
 身近な社会問題から地球規模の問題まで、学年が上がるごとに視点が広がるようにプログラムされているのが特徴だ。
「知識は使えないと意味がない。そこで、総合的学習では『つねに自分の身に、自分の生活に近づけられるか』をテーマに学ばせようと考えた」(村田校長)
 三年生の「朱二校区ふしぎ発見!」では地域事情の理解、四年生の「みんなで生きるやさしい町」では福祉環境を考えさせる。どちらも地域での聴き取り調査が必須となり、学習内容は保護者たちにも発表される。自然環境とのふれあいでは、ボランティアの保護者が、かつて遊んだ池などに引率(教職員も同行)する。まさに町中が学校となるのだ。
きめ細かな評価規準と自己評価の活用
 「本校では情報活用能力、コミュニケーション力、自己評価力と、評価の柱を大きく三つに分けて評価表をつくります。さらに各単元では、評価規準をより具体化して作成し、年間指導計画のなかに入れています」
と研究主任の西村和穂先生。そのほか、子どもたちにも、学習で何を理解しようとしていたか、そのためにしたことや達成度はどうだったかを自己評価カードに記入させる。そのカードは、子どもたちの相互評価でも利用し、学習にかかわった全員で、個人と全体を評価していく。
 また評価は、一年に七回と、かなり細かく区切って行われる。まめに評価の機会を設けることで、学年を超え、教員や児童、保護者にもできるかぎりその評価を共有してもらう。そして微調整しながら年度末の最終評価にしていくことで、公平性や透明性、客観性を確保しているのだ。
総合的学習と教科の基礎・基本との関係を重視
 同校では各教科や道徳、特活で培った意欲や態度、知識や技能が総合的学習に生かされるよう、各教科のどの部分が総合的学習を支える基礎・基本であるかを整理している(図1)。そして、年間指導計画を作成する際には各教科との関連を明記する。また、基礎・基本を確実に習得する活動も充実させている。
 その一つが十五分単位のモジュール学習とノーチャイムだ。子どもたちの学習の連続や習熟度を重視し、十五分、三十分、四十五分、六十分と、十五分単位で授業設定できるようにした。そのため、一~二校時、三~四校時、五~六校時はノーチャイム。また、基礎・基本習得の活動を日常化するため、次のような活動を実施している(図2)。
▼全校一斉に毎週木・金曜日の朝の帯時間十五分間に行う「読書活動」
▼火曜日の朝の十五分間を使って各学年のテーマに沿って行う「スピーチ活動」
▼子どもが自分の学習進度に応じた課題を選択して学習を進め、基礎・基本の定着を図る「課外学習の時間」
 また、父母、祖父母が参加する「朝の読み聞かせ」も基礎・基本定着のための活動の一つだ。毎月一回二十人程度の保護者ボランティアが各教室を訪れ、三十分ほど、子どもの希望する本を朗読する。
 コンピュータの積極的な活用も重要視する。教職員は通年で研修を受け、スキルアップを図っている。子どもたちも最終学年になると、プレゼンテーションソフトを使い、学習内容を発表できるようになるという。
 各教科で培った能力は、学びたいことを自分で調べ、考え、発表することにつながる。パソコンの利用もその延長線上にあり、子どもたちの能力や成果が総合的学習に生かされていく。  各教科との幅広い連携も可能だ。読み書きや資料の理解は国語指導へ、地域調査は社会科へ、調べたデータの整理や分析は算数へ。教員が工夫し、リードすることで無限の可能性が生まれる。
「自分の学びを自分で創る子」という同校の目標は、一生涯使える財産だ。子どもたちがその能力を今後どう活用していくか、結果に期待したい。
▲図1 総合的学習を支える各教科の基礎・基本をまとめた一覧表

▲図2 朝の帯時間(15分間)の活動計画表

 
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