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「総合的な学習」から算数へ、さらに他教科へ
こうして、生活科・「総合的な学習」で取り組んできた「学び方」を育てる算数の授業研究がスタートした。
▲図2 キーワードは「学び方を育てる」。
生活科や「総合的な学習」で「問題解決力」を育てる
授業開発に取り組んでいる(作成/編集部)
校内研究会では、「総合的な学習」で実践してきた手法を、算数のTTや少人数指導に導入する授業が提案された。
▲写真3・4 算数。TTで子どもたちの取り組みをきめ細かく支援
例えば取材した5年生の算数は、「平行な二つの直線の間にある二つの三角形の面積」について考える授業。「形は違っても面積が等しいことを、どうすればもっと簡単でわかりやすく説明できるか」を隣同士や班で話し合う子どもたち。TTを組む二人の先生が話し合いに加わったり、考え方を代弁したり、自分の考え方のよさに気づかせる支援を展開した。
「総合的な学習」の手法を算数に移植する取り組みばかりではない。リサイクルをテーマにした「総合的な学習」では、黒板の横に算数で学んだ表やグラフを意識させる資料が掲示されていた。調べた情報をポスターにわかりやすくまとめる場面で、支援が必要な子どもたちのために用意されたものだ。
▲写真5・6「総合的な学習」で支援が必要な子どものために、
算数の既習内容をパネルで掲示している
ただ算数の力を伸ばすだけでなく、算数で「学び方」を身につけた子どもが「総合的な学習」でさらに育つ。清音小の願いが表れた授業だった。
授業での支援のあり方とともに、評価の手法も校内研究の大きな課題だ。「総合的な学習」で開発された支援と評価の手法を算数で活かすにはどんな配慮が必要か、「数学的な考え方」の評価方法はどうあるべきか…。ハードルの高い課題に向けて、さまざまな取り組みが続いている。
03年度の活動総括はこれからだが(04年1月末時点)、04年度の研究では「まず算数の取り組みを深めること、そして他教科にも視野を広げていきたい」と武政先生。
高い理想をかかげながら、足元を見つめて堅実にできることに取り組む。清音小から感じるのは、「学校の使命感」だ。この取り組みが学力向上につながることを期待したい。
清音小学校に期待すること
大阪市立大学大学院助教授 木原俊行
新教育課程に期待される教科学力はトータルなものですが、その主柱は、「技能・表現」や「思考・判断」という高次な学力です。
そうした意味で、清音小学校が、両者を併せ持つものを「学び方」と呼び、学校全体の課題として取り組んでいることは、大変重要な意味があります。
同校では02年度から「総合的な学習」と教科学習の連携に着手しており、両者に共通する目標を「問題解決力」に求め、校内研修において「総合的な学習」と教科学習の両方の授業研究を進めてきました。先生方は特に、算数の「数学的な考え方を身につける」指導を「総合的な学習」と連結させて構想し、実践されています。「総合的な学習」のカリキュラム開発過程で会得した新しい授業づくりの手法を教科学習に持ち込もうとする積極的な展開といえます。
昨年から着手した算数の取り組みでは、単元の学習過程の掲示やこれまでの学習成果物(レポートや作品など)の展示といった学習環境の整備、数多くのワークシートの準備など、学び方の充実に向けた指導の工夫改善が次々と試みられています。そうした道具や活動を授業に適切に導入しないと、子どもたちの「技能・表現」や「思考・判断」は充実しません。それらの学力は教え込むことができませんから、「総合的な学習」と同様、子どもたちが自ら問題を発見・追究・解決してしていく舞台を整えることに教師の指導性が発揮されることになります。
同校のこうした取り組みが実を結び、子どもたちに確かな学力が育つことを期待します。
(談)
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