ベネッセ教育総合研究所
立山小学校
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算数作文の赤ペン指導
 学習における児童の理解度や内面の変容を的確にとらえ、それを以後の授業改善につなげる取り組みの一つに、全学年で実施している「算数作文」(図4)がある。
図表
 授業の最後の5分間を使い、児童に授業でわからなかったこと、わかるようになったことを振り返らせ、それを評価や指導に生かしていくものだ。児童は自分が何を身につけたのかを自覚し、自己効力感を高めることも期待できる。
 この試みを中心となって進めている少人数加配担当の小嶋康弘先生はこう語る。
「児童の作文の内容は、5段階に分けられます(図5)。教師は作文の内容から児童がどの段階にあるのかを判断し、それに合わせて朱筆を入れていくわけです。その際、あらかじめ定めた六つの視点をもとに適切な言葉を選んでいます(図6)」
図表
 例えば、「初めはわからなかったけれど、途中から簡単になった」と書いてきた場合、「事実の表記」と判断し、それに対して「どこから簡単になったのかな?」と次の授業の導入時に、児童の考えの原因を意識化させる指導を行う。
 夏休みには教師の校内研修も行われた。児童の算数作文を読み、それがどの段階にあり、どのような支援を行えばいいのか各教師でスキルの共有を図った。
「各先生の目線はおおむねそろっていると思います。ただ、実際には時間の少ないなかでやりくりしなければなりません。短い時間でポイントをとらえた朱筆を工夫していく必要があります」(小嶋先生)
 いまは試行錯誤の段階だというが、作文による発見や成果も見られている。
「思ったことを表に出せない性格の児童が、『こんなことを考えていたのか』と発見することもあります」(小嶋先生)
 中筋小学校では、習熟度別授業のなかでも「教育は人づくり」という姿勢を忘れず、児童の学力と興味・関心をともに高めてきた。そこには、最終的に子どもを育てるのは、授業の内容や手法ではなく、教師の指導力であるという教師間の共通理解がある。「算数作文」「学級内習熟」ともに現段階では課題を抱えているものの、生徒指導の機能を意識した、児童一人ひとりに対する教師のまなざしがある限り、課題解決も近いことだろう。


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