ベネッセ教育総合研究所
特集 教室を超えて生きる国語力
有元秀文
有元秀文(国立教育政策研究所総括研究官)

ありもと ・ひでふみ●子どものコミュニケーション能力改善のための研究・提言を続けている。編著書に。『「相互交流のコミュニケーション」が授業を変える』(明治図書)など。
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教室を超えて生きる国語力
 今、学校現場では、国語をはじめとする子どもたちの基礎学力低下が指摘されている。学びの土台としての「国語力」育成に向けた教科の枠を超えた取り組みを考える。


課題整理
今、求められる「生きる力」としての国語力
 近年、子どもたちの国語力の低下を指摘する声が目立つ。国語力低下の原因は何か。次代で求められる国語力とその育成のために学校が担う役割は何か。ここでは、児童のコミュニケーション能力の改善という視点から研究・活動を行う有元秀文氏の話をもとに、国語教育の現状とその課題を整理し、解決に向けた方策を考える。



国語力低下の対策にはまず読書環境の整備が重要
 「あいさつがきちんとできない」「こちらの話の内容が理解できない」「日常的に使える語彙が少ない」「単語を並べるようにしか話せない」……。 小学校の教師の多くが、最近の子どもたちに対して、さまざまな場面で国語力の低下を感じている(図1)
図表
 また一方、自分の感情をうまく言葉で表現できないことを子ども自身がもどかしく感じ、それが「むかつく」「キレる」などの感情や行動を引き起こしていると指摘する声もある。国語力の低下は、いまや社会的にも極めて重要な問題の一つと言えるだろう。
 では、なぜ子どもたちの国語力は低下しているのだろうか。国立教育政策研究所総括研究官の有元秀文氏は、その最大の原因は、日本人の生活環境全体の変化にあると語る。
 「近年、子どもたちが家庭や地域で“会話をする機会”がどんどん少なくなっていると私は感じています。家庭では少子化や核家族化などにより、子どもが家族と会話をすることがずいぶん少なくなりました。また、遊ぶときも一人でゲームをすることが多いため、友だちと話をする機会も減っています。さらに地域コミュニティーが衰退し、大人が気軽に子どもに話しかける場面もあまり見かけなくなりました」(有元氏)
 子どもたちの読書量が減っていることももちろん見逃せない。また、大人に昔話をしてもらったり、本を読んでもらったりという言葉の接点も少なくなっている。さらに、最近は子どもばかりか大人たちも本を読まなくなり、子どもが本に親しむ環境が整っていない家庭が増えてきた。読む力、聞く力、そして語彙力を養ううえで大きな役割を果たす読書や読み聞かせが、家庭の中で減少しているのだ。


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