ベネッセ教育総合研究所
Case Study 学力調査を生かした実践事例
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学力調査実施の3つの成果
 荒川区では、各学校における学力調査実施の初回からの成果を3点にまとめている。
 第1に、子どもたちの学力・意識の両面における客観的・具体的な資料を、学校、子ども、保護者などが共有できるようになったことだ。
 学力のすべてをペーパーで測れるとは考えていないが、荒川区ではその限界を承知した上でも、子どもたちの成果を客観的に見取る必要はあると考えている。その点を地域や保護者にも周知してもらうように説明努力をしており、現在は、荒川区のHPだけでなく、学校ごとのHPでも調査の目的を紹介している。
 第2に、校内に学力向上検討委員会を設置するなど、学校全体で学力向上に取り組むシステムが構築されたことが挙げられる。学級単位、学年単位、教科単位の取り組みだったものが、「学校単位」の取り組みに変化した。
 このことにより、学力向上に取り組む姿勢の学年ごとの差異が少なくなり、学校としての目標を共有しやすくなった。
 第3として、教員の意識が大きく変わった点である。具体的には、基礎学力の向上に正面から取り組む意識が生まれてきた。また、個人単位の志向から、組織としての志向に変化してきたり、あるいは、児童生徒はもとより、保護者や地域の信頼と期怠に学校全体として応えていこうという考え方に変わってきた点だ。
 荒川区でも調査実施初年度は、学校現場からも反発の声が出たようだ。しかし、実際に結果が出ると、結果としての数字の意味を一番理解できるのは現場の教師であり、数字を見て「ああなるほどな」と客観的に捉えることができたという。
 そして、学力調査を継続的に実施することを通して、教師一人ひとりの意識も「子どもたちの学力を保証することが何よりも大事」というように変わってきたことが最大の成果のようだ。
図2、3
■図2 平成15年度 学習意識調査の主な内容についての回答状況(上)
■図3 平成15年度 学習別の基礎的な内容についての達成状況(下)
 
調査の結果を広く情報提供
 また、教育行政として説明責任を果たすために次の3点を実施している。
(1)本人・保護者への情報提供
 児童・生徒が自分の学習状況を客観的に把握できるよう、調査結果について昨年との比較も含めて学級指導、個人面談、家庭訪問などの場で活用できるようにしている。
(2)各学校への情報提供
 児童・生徒個々の調査結果はもとより、教育指導の改善に生かせるような詳細な分析資料を提供した。
(3)区民への情報提供
 調査の結果とその分析も、学校別の調査結果等を区ホームページにて公表した。また、各学校のホームページには「学校ごとの結果分析及び対応策」を公表した。

 荒川区は、何より子ども一人ひとりの学力保証を最優先課題として捉え、教育委員会と学校が一体となり子どもの学力向上の取り組みを行っている様子が伺える。


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