ベネッセ教育総合研究所
Case Study 学力調査を生かした実践事例
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カリキュラムの協同開発が教師の意識も大きく変えた
 03年度の理科の合同授業について小学校6年生からは「中学生は最初は怖そうだったけど優しく教えてくれた」などの感想が寄せられている。また、中学校1年生の感想文にも「小学生が楽しそうに実験していてよかった」などと、年下を思いやる気持ちがあらわれている。
 「困ったときに中学生が手を差し伸べてくれたら、小学生は自分も年少者を助けてあげられる中学生になりたいと思うでしょう。そうした経験によって子どもたちに共生の意識が芽生え、一人ひとりに自尊感情や自己存在感が育まれれば、いじめや不登校などの問題行動も減ってくるのではないかと思います」(中井校長)
 理科は楽しいという児童や生徒が増えた一方で、合同授業は教師たちにも意識改革をもたらした。たとえば、従来なら各校の代表教師がそれぞれの考えを発表するだけで終わっていた「生徒指導部会」も、お互いの意見に耳を傾けて切磋琢磨し合いながら話し合いを進める場へと変わったというのだ。
 「合同授業を提案した当初は、小・中学校共に消極的な態度を見せる教師も少なからずいました。それが、カリキュラムの研究開発という協同作業を行うことで教師間に相手の意見を尊重する姿勢と積極的な交流が生まれたことは、予想以上の成果でした」(中井校長)
 理科を合同授業で扱うことについては、初めてのことという理由で躊躇する反応も、小・中教師双方にあったという。だが、中井校長は、専門の先生が少ないからこそ理科を取り上げるべきだと考える。
 「自分自身の経験から言っても、子どもたちと共に学ぼうとする姿勢で接していくほうが、学習内容に対する子どもたちの理解度は深まるのです」
 大阪教育大の非常勤講師を務め、民間企業との共同研究にも取り組んでいる中井校長は、小・中学校の教師たちのさらなる意識改革の必要性を説く。
 「小・中学校はまだまだ危機意識が足りません。小・中での接続教育を踏まえ、子どもを育てるという職務の重さをもっと自覚する必要があります。もちろん、忙しい中で新たな計画に着手するのは大変なことですから、ときには教師一人ひとりが動かざるを得ない状況を校長がつくる必要もあるでしょう。創意工夫しながら授業改善に取り組むことによって子どもが変わることを実感できれば、教師も自発的に動いていきます」
写真
写真1,2
■写真1・2 小学校6年生と中学校1年生の合同授業


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