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夏休みの指導
中学校編
教科特性を踏まえた課題の設定がポイントに
中学校では、基礎・基本の徹底と、発展的な学習の両立が夏休みのテーマとなる。
休業期間に学力差が拡大することがないよう、生徒の学習習慣を維持するためのさまざまな工夫を見ていく。
中学校の教師は、夏休みを生徒にどのように過ごしてほしいと考えているのだろうか。
ある教師は次のように語る。
「夏休み中、生徒が学校生活の緊張感から解き放たれて、伸び伸びと過ごすのはとてもいいことです。社会が好きな生徒なら地域の歴史を調べたり、理科が得意な生徒なら自然観察をしたりといったように、自分が興味を持ったことをとことん追究してほしい」
一方、別の教師はこう話す。
「40日間も数学や英語の学習から離れていると、2学期からの授業についていくのが大変になります。夏休み中も、最低限の基礎的な学力は維持させておきたい」
確かに時間が十分にある夏休みは、生徒にとって課題探究型の学習に取り組む絶好の機会だ。一つの研究をやり遂げれば、大きな自信となるだろう。しかし一方で、生徒が2学期の授業にスムーズに入っていくためには、基礎的な学習への取り組みも、おろそかにはさせたくない。中学校で生徒に夏休みの課題を与えるときには、教科の特性に応じてこの「課題探究型学習への取り組み」と「基礎学力の定着」の二つのバランスをとることが、ポイントになりそうだ。
「例えば数学の場合、上位層の生徒のなかには、市販の本から発展問題を見つけ、自らチャレンジする者もいないわけではありません。でも多くの生徒にそれを望むのは現実的ではない。また数学では、学力を確実に定着させるために、毎日少しでも問題を解くことが重要です。ですから夏休みの課題は、1学期に学んだ内容の復習を目的としたプリント問題が中心になります。こうした教科特性は、英語にも当てはまります。
しかし社会や理科なら、生徒がその時点で持っている知識の中で、自分なりに課題を追究することができる。夏休みの課題として、課題探究的なテーマを与えやすいのではないでしょうか。
また、国語では文法、漢字などの基本に加え、読書や感想文などにも取り組ませたいものです。つまり夏休みの課題は、
数学や英語は基礎学力の定着をねらいとしたもの、社会や理科では課題探究型のもの
を設定するというように、意識的に役割分担ができるといいのではないでしょうか」
▼図1
▲夏休みの最初にすべての教科の課題をまとめて生徒に渡してしまうと、生徒は夏休みの最初あるいは最後に短期間で集中して済ませてしまい、その結果、学習から長期間遠ざかってしまうことも考えられる。 そこで、数学や英語のように日々の学習の積み重ねが大切な教科では、 登校日を課題提出日に設定し、少しずつ提出させ、代わりに新たな課題を渡すなどの配慮が必要になってくる
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