特集 コミュニケーションが生まれる授業づくり
平田オリザ

▲平田オリザ[ひらた・おりざ]

●劇作家・演出家。劇団・青年団を率い、「こまばアゴラ劇場」を拠点に活動する一方、演劇や教育、言語をはじめ多分野の批評や随筆を執筆。独自の方法により、教育現場に演劇創作を取り入れる活動も行う。06年度より大阪大コミュニケーションデザイン・センター教授。

秋田喜代美

▲秋田喜代美[あきた・きよみ]

●東京大大学院教育学研究科教授。専門は発達心理学、学校心理学。全国の学校に精力的に足を運び、教師教育の研究も進める。『授業研究と談話分析』(放送大学教育振興会)、『ことばの教育と学力』(明石書店)など著書多数。

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特集 コミュニケーションが生まれる授業づくり

子どもが他者とかかわり合う機会が少なくなり、「挨拶ができない」「単語でしか話さない」など、自分の意思や感情を言葉でうまく表現できない子どもが増えているといわれている。
「生きる力」としてのコミュニケーション力を学校教育の中でどのように捉え、育成していけばよいのかを探る。

【対談】

コミュニケーション力を伸ばすための指導とは

東京大大学院教授
秋田喜代美

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劇作家・演出家
平田オリザ

近年、子どもたちのコミュニケーション力の低下が指摘されている。本当にそうなのか。また、子どもたちにどのような指導が必要なのか。東京大大学院の秋田喜代美教授と、劇作家の平田オリザ氏がコミュニケーション力の本質に迫った。

コミュニケーション力は低下していない

――教育現場では子どもたちのコミュニケーション力に対する懸念が広がっています。

 

平田 そもそも、子どものコミュニケーション力が低下しているという前提に疑問を感じます。確かに単語だけで話す子どもは目立ちますが、それでも意味は通じますから、コミュニケーションはできているともいえます。むしろ、文章で話す必要がないから単語で伝えるのでしょう。その要因と考えられるのが少子化です。兄弟姉妹や友だちが少なく、親は何でも理解してくれる。「ケーキ」と言えばケーキが出てきて、ときには何も言わなくても用意される。これでは話さないのも当然です。

 

秋田 私も個人に内在するコミュニケーションの潜在能力は低下していないと思います。一方、PISAの調査からは、思考したことを意味のあるまとまりとして表現する、といった意味でのコミュニケーション力には課題があることもわかっています。これらは個人の能力の問題というより、教育機会の問題と捉えています。コミュニケーションは「関係性」から引き出されるものですから、それが教室や家庭で成立しているか、その機会があるかどうかを見直さなければなりません。


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