特集 コミュニケーションが生まれる授業づくり
広島県
広島市立鈴が峰小学校

広島市街と瀬戸内海が一望できる高台に位置する。2002年度から文部科学省「学力向上フロンティア校」、05年度から広島県「『ことばの教育』パイロット校」の研究指定を受け、「確かな学力を身につけ、自ら学び続ける子どもの育成」を目指す。

三島幸枝

▲校長 三島幸枝先生

児童数◎375人
学級数◎14学級
〒733-0852
広島県広島市西区鈴が峰町36-2
TEL 082-277-8160
FAX 082-277-8439
http://www.suzugamine-e.
edu.city.hiroshima.jp/


VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【事例3】論理的な思考力・表現力の育成

「言語技術」指導で論理的なコミュニケーション力を育成

広島県 広島市立鈴が峰小学校

広島県が取り組む「ことばの教育」(注1)を推進するパイロット校として、「言語技術指導」を行う鈴が峰小学校。問答ゲームや描写など、言語技術指導の手法を駆使して社会で必要となる言語スキルを高め、「ことばの力」の育成を教科学習にも広げている。

注1:広島県「ことばの教育」の概要は以下のURLを参照
http://www.pref.hiroshima.jp/kyouiku/hotline/kotoba/index1.htm

見たものを正確に伝える技術を養う「描写」

 「これは帽子です。下は赤です。上は青です。真ん中に黄色い星がついています」
  鈴が峰小学校の国語の時間。右記の板書を基に、3年生1人ひとりが油性ペンで紙に絵を描いていく。野球帽やコック帽など、思い思いの形となった絵を黒板に貼って分類した上で、土井純子先生は「正解」の帽子の絵を提示した(写真1)。それはベレー帽だった。
写真1
写真1 右側に並んでいるのが、子どもたちが描いた帽子。
土井先生が貼り出した「正解」は左の帽子
  「どうしてこの帽子のようにならなかったのかな?」と土井先生は、「正解」の帽子を指さしてこう問いかけた。
  「形を言っていないから」「じゃあ、どう言えばよかったのかな?」
  そんなやりとりを重ね、どんな文章にすれば「正解」の帽子を描けるのか、冒頭に掲げた文章に必要な要素を加えていく(写真2)。
写真2
写真2 基の文章に何をどんな順番で加えていけば、「正解」の帽子を描けるのか、子どもたちは次々に意見を出し合った
  言語技術指導の一環として行われているこの授業のテーマは「描写」。この作業を通して子どもたちに学んでほしいのは、「大きい情報」から「小さい情報」へという描写の原則である。自分が目で見たものを相手が頭の中で描けるように、まず全体像がわかる情報を最初に提示した上で、詳しい情報をあとから追加していく伝達方法だ。
  次々と飛び出す子どもたちの発言に対して、土井先生は大きな方向付けはするが、意見を否定したり、修正したりはしない。「正解」という言葉も口にしない。その言葉を聞いた途端、子どもたちは口を閉ざしてしまうからだ。土井先生は「そうだね」「なるほど」と子どもの発言を肯定的に受け止めつつ、「ほかにはないかな?」と新たな発言を促していく。
  子どもたちの発言を基に修正を加えていった結果、次のような文章にまとまった。
  「これは、漫画家の人が使うベレー帽です。上の丸い玉は青です。真ん中に黄色い星がついています。あとは全部赤です」
  「ばっちり伝えることば術」と題するこの単元では、「目で見たものを言葉で伝える技術を身に付ける」のが目標だ。具体的には、対象を正確に観察する技術、情報整理の技術、対象物の特性を取り出す技術、目的に応じた説明の技術などを身に付けていく。
  「実際に授業をすると、どれが大きい情報でどれが小さい情報か、私自身も迷うことがあります。授業を通して教師の言語力も鍛えられています」(土井先生)

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