吉備王国の中心として栄えた総社市は、古代の城跡や古墳が点在する遺跡の宝庫である。その恵まれた環境を教材として故郷への理解や愛情を育む「ふるさと教育」は、総社市の教育の大きな特色となっている。その教育と並行して力を入れているのが、国際理解教育だ。総社市教育委員会(以下、市教委)学校教育課の上岡仁(うえおかひとし)課長は、次のように説明する。
「まずは自分の故郷を愛することが、世界中の人々がそれぞれ故郷を持っていることを理解する気持ちにつながるのではないでしょうか。そうした考えから、ふるさと教育の一環として国際理解教育を推進してきました」
その取り組みは、1960年代に市内の中学校に岡山大の留学生を招いて交流を始めたことに遡る。「ALT(外国語指導助手)」という言葉すらまだなかった87年には、市独自に外国人助手として数名を採用。01年度には、ベルリッツ岡山の協力を得てベネッセコーポレーションが組織した3名のALTが英語の授業に入るようになり、小学校(年間3~5日間)と幼稚園(同1~3日間)でもALTによる国際交流が始められた。
「大切にしているのは、『人』の魅力によって英語に興味を持たせることです。指導の技術よりも、楽しく歌ったり踊ったり、休み時間に一緒に遊んだりできるコミュニケーション能力を重視してALTを採用しています」
幼稚園にALTを導入するのは、小学校、中学校の英語教育にスムーズにつなげると共に、早い時期から外国人に親しみ、異文化を受け入れる人間性を育む狙いもある。
05年度には、各小・中学校から1名、計19名の教師を集めて、市の教育研修所に「小学校英語研究委員会」を設置。低学年では10時間、中・高学年では20時間を英語活動に充てることを決め、同委員会によって年間指導計画がつくられた。
「教師自身が教えることを楽しいと思わなければ、子どもが英語を楽しめるはずがありません。そうした考えの下、英語が不得意な教師でも無理なく教えられる指導計画を作りました」
指導計画には現場のアイデアが重要と考え、委員とALTが話し合いを重ね、ベネッセコーポレーションのカリキュラムを現場の教師が使いやすいように改訂した。特徴は、毎回の学習の流れや教師の発言を日本語と英語で併記していることだ。これにより、ALTではなく、担任が中心となって指導できるようになった。
06年度からは市教委主催の夏休み研修会(2~3日間)を行い、指導のレベルアップを図る。主な内容は県内の先進校の教師の講演や具体的な指導例の紹介で、市内公立小学校の教師のほぼ全員が参加している。 |