新学習指導要領では、算数科に限らずすべての学習活動の中で、基本的な知識・技能を子どもにしっかり「習得」させると共に、これらを「活用」して思考力、判断力、表現力などを育む指導をすることが明記されています。しかし、誤解しないでほしいのは、授業の展開が「ここまでは習得、ここからは活用」と必ずしも分けられるものではないということです。学んだことを活用することで、習得が確かなものとなり、習得を確かにする活動の中で、活用力も身につくからです。
例えば、三角形の面積の求め方を学習するときに、子どもに三角形を示して、「これは平行四辺形の面積の求め方を考えると、わかるかもしれないよ」とヒントを出したとします。すると、何人かの子どもが、三角形の面積は平行四辺形の面積の2分の1であることに気がつきます。ということは、同じ面積の三角形を組み合わせて平行四辺形を作り、平行四辺形の面積を出したあとにそれを2で割れば、三角形の面積が求められる。こうして子どもは、「三角形の面積=底辺×高さ÷2」の公式を身につける。いわば、既習の平行四辺形の面積の求め方を「活用」することで、三角形の面積の求め方を「習得」できるのです。
逆に、「習得」を確かなものにするためには、子どもにさまざまな三角形を示し、「ここを底辺にしたら、高さはどこにすればいい?」という問いを繰り返すといったような指導が大切になります。これによって、子どもは高さや底辺に関する確かな知識を「習得」するわけですが、同時にさまざまな三角形の面積にも対応できる「活用」の力も身につきます(下図参照)。習得の伴わない活用はないし、活用の伴わない習得もないのです。
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