東日本大震災から12年となり、被災時の記憶を子どもにどう継承していくかは今後の大きな課題だ。岩手県では、学校での演劇を通じた取り組みもある。専門家は、自分で表現することによる学びの重要性を指摘する。
大津波で校舎が被災した宮古市立田老第一中学では、2007年ごろから震災を題材にした生徒会の企画劇を実施。毎年台本を変え、昨年は地震発生から避難の様子、避難所でのボランティア活動などを再現した劇を文化祭で披露した。
田老地区は、過去に何度も大津波の被害を受けた。同校の高野里緒教諭(30)は「これまでは(震災を)経験してきた人たちが語り継いできた。演じた生徒は、命の守り方を家族や友人に伝えていってほしい」と語る。
岩手大の本山敬祐准教授(教育学)は、震災の記憶を子どもに伝承するためには「表現を通して学ぶことが重要だ」と話す。演劇などの創作活動は、頭にインプットしたことなどを道具や全身で表現する過程で深い学びが生まれ、被災経験の有無によらない記憶や教訓の伝承につながるという。
また、人と関わる中で自分のできることに気付けることから「自身のアイデンティティーの源泉になる」と指摘。特に、地域や学校に代々受け継がれる作品への参画は「次につないでいくという役割も自覚できる」と話した。