南アフリカに分布するキク類の一種の花びらが変化し、ツリアブの雌そっくりの色や形になった部分(左)。3種類の遺伝子群で形成されると分かった(英ケンブリッジ大提供)
南アフリカに咲くキク類の一種の花は、花びらの一部をツリアブの雌にそっくりな色や形に変え、雄をおびき寄せて花粉を運ばせる。英ケンブリッジ大などの国際研究チームがこの「偽の雌」が形成される謎を解明し、3種類の遺伝子群が働いていることが分かったと発表した。論文は23日までに米科学誌カレント・バイオロジーに掲載された。
このキク類の学名は「ゴルテリア・ディフューサ」で、オレンジ色の大きな花びらで囲まれた中心部に小さな筒状の花が密集している。花粉を出す部分と受粉する部分があるが、同じ個体の花粉は受粉できないため、ツリアブを介して他の個体と花粉をやりとりする必要がある。
オレンジ色の花びらにある模様は同じ種でも多様だが、ツリアブの一種の雌が複数止まっているように見えるパターンがあり、その精巧な作りが長年の謎だった。
研究チームが解析した結果、鉄分を運ぶ遺伝子群によりオレンジ色が青緑色に変わり、根に微細な毛を生やす遺伝子群によって雌の体に似た形になるほか、偽の雌の位置は花の模様の遺伝子群により決まることが明らかになった。
花には蜜を吸いに雌も来るが、雄は偽の雌と交尾しようとして動き回り、花粉がたくさん付着する。乾燥した地域の短い雨期に花を咲かせて受粉しなければならない厳しい環境に対応し、進化したと考えられるという。