チョウの研究家として知られ、昨年86歳で亡くなった元慶応大工学部教授の藤岡知夫さんが収集した約29万匹分のチョウ標本が中部大学蝶類研究資料館(愛知県春日井市)に移され、同大で企画展が開催されている。日本のチョウのコレクションとしては最大規模で、絶滅危惧種も含め全ての種がそろっているという。

藤岡さんは幼少時からチョウに興味を持ち、仕事の傍ら、半生をかけて日本全国で収集を続けた。標本には採集した場所と日付が記され、地域による斑紋の違いなども確認できる。現在は採集が規制されているクモマツマキチョウなど希少な種類も多く含まれる。

標本は藤岡さんが自宅で保管していたが、高齢となったことから、息子の幸夫さん(61)が移管先を探していた。海外の博物館から購入打診もあったが、国内にとどめたいとする藤岡さんの意向を尊重し、友人の飯吉厚夫さんが当時理事長を務めていた中部大が保管を決定。今年3月に移管作業が完了した。

同館館長の大場裕一教授は「藤岡コレクションになければどこにもないと言えるほど国内のチョウが網羅されている。標本から日本の環境の変化なども見えてくるため非常に価値がある」と評価する。同大は標本を用いた遺伝子解析も進める。

企画展ではコレクションのうち約5700匹が展示されている。15日まで。