【ニューヨーク時事】バイデン米大統領が、学生ローン債務の減免措置を推進している。学費が高い米国では、卒業後も長年にわたり多額の負債を抱える国民が多く、11月の大統領選をにらんでそうした票を取り込むのが狙いだ。一方、「借金返済は自己責任」という考え方が強い野党共和党や保守層は、批判を強めている。

 ◇「人生が変わる」

 「死ぬまで払い続けることになると思っていた」。ロサンゼルスで活動する写真家のマイクさん(36)は今月、約6万ドル(約940万円)残っていた美術大のローン債務の返済免除通知を受け取り、胸をなで下ろした。

 在学中からアルバイトで返済を始め、プロになった2014年以降は毎月300~800ドル程度を支払ってきたが、利息の上乗せもあって残高がほとんど減らないように感じた。返済免除で「人生が変わる。家の購入も考えられるようになる」と再び将来に希望を見いだしている。

 返済免除は、バイデン政権が美大の運営に問題があると認定したことで実現した。卒業後の就職見込みなどに関し、学生に虚偽の説明をしていたと判断。今月、約32万人の元学生が抱える計61億ドル分について、返済を免除すると発表した。

 ◇「公平じゃない」

 バイデン氏はかねて学生ローン債務の減免を掲げていたが、保守派判事が過半数を占める連邦最高裁は昨年、これを無効と判断した。政権側は、より対象を絞った救済策に修正。この美大のようなケースのほか、大学で20年以上、大学院で25年以上ローンを返済している人の残高を帳消しにするなどの措置を進めている。

 「またバイデンに投票しなきゃ」。SNSには債務返済が減免されたとみられる人の投稿が相次ぐ。以前から民主党支持のマイクさんも「バイデン氏に入れる可能性がさらに高まった」と語る。

 現職の強みを存分に生かしたバイデン氏の作戦に、共和党側はいらだちを募らせる。返り咲きを目指すトランプ前大統領の副大統領候補の座を争っているとされるノースダコタ州のバーガム知事は今月、CNNテレビの番組で「見たことがない規模で票の買収が行われている」と非難。「一生懸命働いて返済している人は『公平じゃない』と言うだろう」と主張した。