外国人労働者の受け入れ拡大に伴い、言葉や文化も分からないまま来日する児童・生徒が増えている。義務教育の対象外だが、「不就学ゼロ」「全日制高校への進学率向上」に挑む自治体がある。自動車関連産業が集まる愛知県西尾市。官民、学校現場を挙げて就学支援や日本語教育を続ける。

 「今の私があるのは菊池先生のおかげ」。14歳で来日したベトナム籍の石川百風さん(27)は涙ながらに語る。「楽しみ」と心を弾ませた生活は言葉の壁にぶつかった。「数学の授業で『分かりません』しか言えず、周りに笑われ恥ずかしかった」。おしゃべりが大好きだった少女は沈黙し、両親に進学したくないと訴えたほどだ。

 百風さんのように来日間もない子を約15年前から献身的に支えるのが、市の「日本語初期指導教室カラフル」室長の菊池寛子さん(52)、民間の就学支援施設「多文化ルームKIBOU」の川上貴美恵さん(46)ら。

 菊池さんはブラジル出身者らの支援員を束ね、小中学生に日本語を3カ月間指導して在籍校に送り出し、各校で巡回サポート。子どもの上達ぶりから「菊池マジック」と称される。川上さんも海外出身のスタッフらと幼児や学齢期を過ぎた子らを指導しつつ、家庭を回って不就学の子を毎年10人程度見つけては受け入れ、橋渡ししてきた。

 契機はリーマン・ショック。日系ブラジル人の出稼ぎ労働者を中心に派遣切りの嵐が吹き荒れ、「夜逃げ同然で、行方不明の子がいっぱいいた」(川上さん)。危機感を強めた市が対策を始め、県語学相談員などの経験がある菊池さんと川上さんが中心を担ったが、「指導法は手探り。スタッフも少なく、学校の関心は薄かった」と口をそろえる。

 市幹部は「外国人は置き去りにされ、日本人が考えている以上に差別の中で生きている。定住者の増加と国籍の多様化が進む中、粘り強い活動で学校現場にも『社会を支える一員』との認識が浸透していった」と話す。

 全日制高校への進学率は2022年度に初めて半数を超え、進路の裾野は大学などに広がる。指導が必要な子どもは今年度約800人と増加の一途で、支援の重要性は一層高まる。

 つらい思いはさせない―。高校進学後、苦学して日本語を習得した百風さんは、工場での通訳などを経て、菊池さんにスカウトされ、支援員として子どものサポートに当たる。「間違えてもいい、笑われてもいい。でも恥ずかしがらないで」。こう語り掛け、学校を日々駆け回る。