ここ数年、日本の高校で進む共学化。背景には男女平等の推進などが挙げられるが、女子校の存在意義は薄れたのか。女子校で進路指導を行う教諭は「性別による先入観にとらわれず、何にでも挑戦できるのは、女子校だからこそ」と強調する。

東京都武蔵野市の吉祥女子中・高校は毎年、さまざまな分野で働く卒業生による講演会を開催する。講演会の人気は高く、進路担当の明石里恵教諭(51)は「女性として社会で活躍するイメージが湧きやすいようだ」と話す。講演を聴いた高校3年の生徒(18)は「ロールモデルとなる憧れの先輩が多く、自分の可能性が広がった気がする」と目を輝かせた。

明石教諭は「価値観が築かれる大切な時期に、性別ごとに期待される役割などを考えずに何にでも挑戦できる」と女子校の意義を強調。卒業後に男性が多い大学へ進み、女性であることを理由に嫌な思いをした例も聞くが、「女子校で過ごした経験から得られる自己肯定感や達成感は性別の壁を取り払い、社会を変えていく力につながると思う」と語る。

文部科学省がスーパーサイエンスハイスクールに指定する豊島岡女子学園中・高校(同豊島区)では、高校の理系クラス選択者が文系を上回るなど、理系の道を志す生徒も多い。増田雅子教諭は「『女子なのに理系』や『女子だから文系』などの固定観念がない環境で、自分のやりたいことを素直に選べることが関係しているのでは」とみている。

同校では、課題を設定し解決に向けて取り組む探究活動にも力を入れる。生徒自身が課題を決めることもあり、文化祭の役割分担の平等な組み方といった身近なものから、離島医療や科学的な問題などテーマは多岐にわたる。

増田教諭は「性別も文系・理系も関係なく、生徒たちが本当にやりたい課題を見つけて取り組めば、道は次々と開いていく」と説明。「生徒にとって、性別による差がない女子校で過ごすという選択肢もあることが大切ではないか」と話している。

【編集後記】私も女子校出身者だ。取材を通じ、自身の女子校生活が「性別を理由に制限されることは何もない」ということを学んだ貴重な時間だったと改めて気付いた。

明石教諭は、中学・高校時代を「価値観が築かれる大切な時期」と位置付けている。男女の役割分担に関し、さまざまな固定観念が根強く残る日本の社会。女子校で過ごした経験は、社会に出た後も性別を言い訳にせず自身の可能性を広げていくことにつながっていると感じた。(時事通信社会部記者・伊藤奏乃)。