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  • 【誌面連動】『VIEW next』教育委員会版 2021年度 Vol.3

<フロントランナーに聞く 教育のnext>
他者をリスペクトする風土を育むことが、個別最適な学びへの第一歩
~内閣府認定特区高等学校 明蓬館高校 校長・理事長 日野公三

2022/02/04 09:00

予測困難な社会の中、教育の最先端で活躍する方が次代の教育のあり方について語る本誌連載「フロントランナーに聞く 教育のnext」。第5回は、発達障害のある子どものための普通教育を行うコースを持つ明蓬館高校校長・理事長の日野公三先生です。インタビュー動画や、日野先生と読者のQ&Aコーナーもあります。
(2022.2.4 日野先生からのご回答を掲載しました)

本誌記事

日野先生からは、次代の教育について、次のキーワードが示されました。

●キーワード1:障害のある子どものスペシャルニーズ
●キーワード2:他者をリスペクトする風土
●キーワード3:履修主義から習得主義へ
●キーワード4:社会に開かれた学校へ

詳しくは、本誌記事をご覧ください。

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インタビュー動画

本誌では語り尽くせなかったお話を動画(約10分)でご視聴いただけます。
①明蓬館高校と自治体との連携ポイント
②不登校の保護者の声から生まれたSNEC「中等部」
③特別支援教育の実践から教員が学べること

ご質問コーナー

読者の先生方からのご質問に、お答えいただきました。

教育・医療・福祉が密接に結びつく効果的・効率的な方法を教えてください。(北海道・小学校教諭)

学校と福祉(行政、施設・機関)と医療(病院、クリニック)の間に接点をつくることです。最初の一歩としては、互いが使う言葉を理解し合えるようにするとよいでしょう。学校は対象とする相手を「児童生徒」と言い、福祉機関は「利用者」と言い、医療では「患者」と言います。まずはそうした違いを認識し、それぞれが使う言葉の意味を理解し合うことから始めなければなりません。
学校ができることとしては、保護者の同意を得た上で、子どもたちがかかっている主治医と連携し、情報を収集して共有します。そして、障害特性やそれまでの診療・投薬歴、見立てを確認します。分からない専門用語は聞き、後で調べ、その機会に理解するようにします。
学校現場としての所見や方針などもお伝えし、示唆、助言などをもらうようにします。
同様に、子どもと保護者がかかっている行政の福祉機関・窓口や福祉サービスとも連携していきます。発達障害センター、療育センター、特別支援教育総合センターなど、呼び名は様々ですが、重要な情報を有しているので、保護者の同意を得て、連携するとよいでしょう。
医療や福祉とつながることにより、思った以上の効果が期待できます。これまで、子どもと保護者は、右往左往しながら各機関の支援や相談を受け、しかも、学校の担任や各機関の担当者が変わる度に、一から話をしなければならない状況に置かれてきましたが、そうしたことによる心労を軽減できるでしょう。子どもや保護者は、教育・医療・福祉の3つの領域の関係者に見守られていることによる、精神的な安定を得ることができるのです。
そこから歩みを進めて、定期的、あるいは不定期にケース会議を運営していく関係性まで高めています。IEP(個別教育支援計画)を学校がつくり、医療や福祉の関係者を巻き込んで協力を得られると、とてもよい環境を整えられるでしょう。

日野先生が理想の教育のところで述べておられるように、これまで、学校が地域社会で担ってきた役割を考え直す時だと考えますが、いかがでしょうか?(島根県・中学校教諭)

学校の役割として、地域や社会との連携の必要性が、国の指針や学習指導要領などでも唱えられるようになりました。これまでの学校は、自己完結的であり過ぎたように思います。
学校行事も、定例化を過度に重んじてはいないでしょうか。一つひとつの行事の上位目的と手段を整理し直し、地域社会を巻き込んでいけば、学校の外部の方に思い切った関与をしてもらう関係性も構築できると思います。
外部の関係者の関与の方法は多種多様です。一つひとつの行事には、開催委員長、実行委員長、委員、審査委員、評議委員、協力者、寄付者など、様々なキャストが必要です。その際に、同窓会組織を動員するという方法もあります。子どもたちも、小・中学校時代の多感な時期に、地域社会の過去・現在・未来を知り、様々な人に接することにより、学習上の動機や手段も生み出されるでしょう。自分たちの学習が、自分のためだけでなく、人のため、地域のためにもなることが、実感できるようになるはずです。
新たな仕組みづくりには手間も時間もかかりますが、校長を始めとする役職者や教員は、そのためのスポークスマンであり、コーディネーター(架け橋であり、調整役)になるとよいのではないでしょうか。

先生のこれまでの歩みには、おそらく文字には表れないご苦労があったのではないでしょうか。特に、保護者に対して、工夫されてきた「ノウハウ」を、ぜひ教えていただきたいです。(大阪府・私立大学教員)

私立学校では、学校独自のポリシーに基づいて生徒募集をしているため、生徒や保護者とは、同志的な関係性を確認し合うことができます。そうした同じ価値観を共有し合える関係であるため、公立学校の先生方のご苦労に比べると、たいした苦労ではないと感じます。
本校は、通信制高校の教育課程の中で特別支援教育を行っていますが、スタート時は様々なことが手探りでした。教員に加え、教員以外の福祉系支援員や心理士の相談員と担任チームをつくることや、IEP(個別教育支援計画)を完全な学校の義務として取り組むこと、心理・発達・知能検査の実施体制を校内につくることなど、いずれも前例のない取り組みでした。教員の間にも疑心暗鬼があり、保護者も協力や期待よりも警戒心、不信、不安の方が大きかったと思います。
3年という年月の経過とともに、警戒心、不信、不安は保護者や教員から消えていきました。安心できる居場所や学べる環境を得た子どもたちの姿を見られるようになったことが、課題を乗り越える一番の原動力になったと考えています。

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