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  • 【誌面連動】『VIEW next』教育委員会版 2021年度 Vol.4

<フロントランナーに聞く 教育のnext>
子どもが主語となる「教えないスキル」で、自立・自律できる力を育む
~Jリーグ常勤理事、ビジャレアルCF元コーチ 佐伯夕利子

2022/07/07 09:00

予測困難な社会の中、教育の最先端で活躍する方が次代の教育のあり方について語る本誌連載「フロントランナーに聞く 教育のnext」。第6回は、スペインの名門クラブチーム・ビジャレアルCFのコーチ時代に、「教えないスキル」で自立・自律できる力を選手に育み、クラブの躍進に貢献した佐伯夕利子氏です。
インタビュー動画や、佐伯氏と読者のQ&Aコーナーもあります。

本誌記事

佐伯氏からは、次代の教育について、次のキーワードが示されました。

●キーワード1:「学び」ではなく「学びの機会」を提供
●キーワード2:一人ひとりのスペースで学べる環境
●キーワード3:アンラーンから始める
●キーワード4:記憶に残るのは“理論”よりも“感情”
●キーワード5:人としての最上位概念は「リスペクト」

詳しくは、本誌記事をご覧ください。

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インタビュー動画

インタビューの動画(約11分)をご視聴いただけます。
①主体的で自立(律)した学習者が育つ環境とは?
②欧米ではハラスメントが起きにくい要因とは?
③学校と地域クラブの歩み寄りで、包括的に育てる

ご質問コーナー

読者の先生方からのご質問に、お答えいただきました。

「アンラーン」「地位や年齢に関係なくリスペクトすること」の考えに大変共感しました。ほかにも日本の学校教育をよりよくできそうな海外の事例があれば、教えてください。(福岡県・教育委員会)

欧米の子どもたちは、小さい頃から大人に「エンジョイ!」と言われて育っていると感じます。勉強、スポーツ、お友達のお誕生日会、新学期、すべてのシーンにおいて大人は、笑顔で「エンジョイ!」と言って子どもを送り出します。大人になっても、「明日、出張に行ってきます」と職場で報告をすると、「エンジョイ!」と笑顔で送り出されるのです。
一方、私たち日本人は「頑張れ!」「耐えろ!」「乗り越えろ!」のシャワーを浴びて育ちます。みんなもう充分に頑張っているのに、「まだ頑張れ!」と言われ続ける環境で疲弊し、悲壮感の漂う日本のアスリートを見ながら、今こそ大人たちが、流す文脈を変えてあげなければならないと感じます。

これからの時代、日本人の成長過程や教育課程において何に取り組むにしてもその瞬間瞬間を味わいながら「エンジョイ!」することを、学びの環境下で文脈化することが大切だと感じます。

「教えないスキル」は、サッカー部を指導している自分としても、大切にしなければと目が覚めました。とは言え、我が弱小チームにも勝つ喜びを味わってほしいと思っています。もしアドバイスがあれば、ご教示ください。(岐阜県・中学校教諭)

「勝つ」ことは誰にとってもうれしいことですよね。ただ、私たちはあまりにも「勝つ」ことにとらわれ過ぎて、息が詰まりそうになっている自分たちに気づきました。そこで、「勝つ」ことについて、120人の指導者が徹底的に議論をしました。
その結果、たどり着いたのが、サッカーにおける「勝ち・負け」は、「アンコントローラブル要因」であるということでした。つまり、「勝つ」ことは、自分のコントロール下にない、ということです。
サッカーにおいては、どれだけ努力をしても、どんなによい準備をしても、勝ったり、負けたり、引き分けたりします。相手があって初めてゲームが成り立つ競技であり、複数かつ複雑な要素が絡み合い、さらに相対的に勝ち負けの結果が出るということを、改めて確認し合いました。

とは言え、「選手たちに喜びを体験させてあげたい」という指導者の思いがあるのも事実です。では、それはどのようにすれば、指導現場で実現することができるのでしょうか。
1つの例に過ぎませんが、私たちは、自己評価を、他者との相対比較で自己認知するのではなく、「自分がどうにかすれば何とかなるもの」に意識を向ける、ということがアスリートの「喜び」につながるとの結論に達しました。相対ではなく、絶対的な評価をスポーツ現場にも定着させることができれば、自分のコントロールの範疇外にある「勝敗」に感情を振り回されることも減るのではないかと考えたのです。
そうした考えに基づいた指導によって、自分にできるあらゆることに意識を集中し、自己実現や自己超越を目指して、主体的にトレーニングや試合に取り組む選手が増えました。ご参考になれば幸いです。

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