学校教育情報誌『VIEW next』『VIEW next』TOPへ

  • 教育委員会向け
  • 誌面連動
  • 教育のnext
  • 【誌面連動】『VIEW next』教育委員会版 2021年度 Vol.1

<フロントランナーに聞く 教育のnext>
教育とテクノロジーの融合が、自らの学びを築く自律的な学習者を育む
~デジタルハリウッド大学 教授・学長補佐
一般社団法人教育イノベーション協議会 代表理事 佐藤昌宏

2021/09/22 09:00

予測困難な社会の中、次代の教育のあり方を教育の最先端で活躍する方に語ってもらう本誌連載「フロントランナーに聞く 教育のnext」。第3回は、経済産業省「『未来の教室』とEdTech研究会」座長代理を務める佐藤昌宏氏です。インタビュー動画や、佐藤氏と読者のQ&Aコーナーもあります。
(2021.09.22 佐藤氏からのご回答を掲載しました)

本誌記事

佐藤先生からは、次世代の教育について、次のキーワードが示されました。

●キーワード1:リベラル・アーツの重要性
●キーワード2:「習っていないから分からない」をなくす
●キーワード3:子どもの自由な学びを止めない
●キーワード4:答えは学校現場にある

詳しくは、本誌記事をご覧ください。

PDFダウンロード

インタビュー動画

本誌では語り尽くせなかったお話を動画(約10分)でご視聴いただけます。
①テクノロジーを活用した主体的な学びとは?
②ITリテラシーの育成における学校の役割とは?
③GIGA スクール構想による新しい教育の可能性は?

ご質問コーナー

読者の先生方からのご質問に、お答えいただきました。
※すべてのご質問にはお答えしておりません。ご了承ください。

全国で取り組んでいるGIGAスクール構想の方向性・理念が示されており、参考になりました。それぞれのキーワードに対して、学校ではどのように教育課程の編成を行っていけばよいかなどの参考例があれば紹介してほしいです。(沖縄県・教育委員会)

例えば、個別最適化であれば、子どもの個別の状況を表計算ソフト等の汎用技術を活用して定量的、時系列的に把握し、客観的な事実に基づいて他の教員と共有しながら指導することなどが可能です。
ただ、児童生徒数や教員のスキルなどによっては、教育課程の編成に向けて、いくつかのステップが必要なケースがあると思います。まずは自分たちの状況を把握し、課題を抽出をしたうえで、課題を解決するために「どのような教育課程の編成が必要なのか」「そこに個別最適化が機能するのか」を検討したうえで、編成するとよいのではないでしょうか。

テクノロジーの発展により、子どもたちの学びが大きく変わろうとしていることはよく分かりました。ただし、GIGAスクール構想においては、国のある程度の支援策はあっても、自治体間格差はますます広がりそうな気がしています。この問題を解決するには、どのような方法があるのでしょうか?(山口県・小学校教諭)

ご指摘の通り、テクノロジーの活用によって、自治体間格差は拡大する傾向にあると思います。ICTを活用できる教員の育成、地域の理解、予算や制度の整備等、原因は様々で、自治体ごとに状況は異なります。
ただし、これはある意味、過渡期における成長痛の一部だと理解しています。大事なことは、公平性という名の下に、進んでいる自治体の足を引っ張ることなく、先進事例などを共有しながら進んでいない自治体を引っ張り上げることだと思います。それには一定の時間が必要になりますが、10年かかるところを5年に、5年かかるところを3年にしていくといった地道な努力をすることが、私たちの仕事だと考えています。

「習っていないから分からない」という子どもをなくしたいという佐藤先生のお考えは、特別活動が目指すことと共通するものがあると思います。いわゆるリベラルアーツともかかわってくるのが道徳や特別活動だと考えますが、それらとのかかわり、特に今日の特別活動のあり方について、どのようにお考えになりますか?(北海道・教育委員会)

リベラルアーツというと、倫理・道徳・哲学などと解されることが多いですが、本来は「何が正しいか、美しいかを自らの価値観で導き出すこと」だと理解しています。ただ、困ったことに、人や状況、見方によって価値観は異なり、定まった答えはありません。
子どもたちも日々このような判断を問われるシーンは数多くあると思います。そうした自身のシーンを取り上げ「どんな実践と判断をしたのか」「やってみてどうだったのか」を考えさせる特別活動は、もっと増やすべきではないかと考えます。
日々進化するテクノロジーには善も悪も、白も黒もありません。正しく使えるかどうかは、使う側の個の力によるので、ますますリベラルアーツの必要性が増してくると思います。

リベラルアーツ教育を充実させるために、どのような評価システムを構築しているのかを知りたいです。(鹿児島県・中学校教諭)

前述の通り、リベラルアーツは、定まった答えがありません。それらの評価方法としては、ルーブリックを使った評価などが考えられると思います。
また、定まった答えはないにしても、正しい思考に至る原則的な方法はあります。例えば「多くの事例を調べたか」「双方の立場から考えてみたか」「自分の価値観とは何かをメタ認知したか」などです。もちろん、発達段階に応じて、かみ砕いたシンプルな問いにする必要はありますが、大事なことは、学習者の目線に合う多くの事例とレベルをつくり、それを見取るための評価を実践することだと思います。

「シーン別の教員の役割」によって、これからの私たちの立ち位置のイメージが鮮明になりました。コーチやファシリテーターとなるためには、ICTに関するスキルの習熟とともに、子どもたちの学習意欲を高める学習課題を準備しなければなりません。学習課題の魅力をアップする示唆がほしいです。(鳥取県・中学校教諭)

子どもの学習意欲を高める学習課題をどうつくるかは、教員の腕の見せどころですね。子どもが好きなアニメや漫画を歴史や社会の問題にひもづけたり、花の形から算数に結びつけたり、といった例を先生から聞いたことがあります。そうした子どもの目が開きそうな共通課題を拾い出し、教科学習につなげるという課題の出し方は、答えの1つと言えるでしょう。

分からないことを自分で調べる教育を意図して行っても、保護者からは「教えるのが先生の仕事ではないのか」と苦情が来ることがあります。意識の高い教育活動と、保守的な保護者の間に挟まれて困っているのが、心ある学校・教員の現状だと感じています。どのように対処すればよいのでしょうか?(大阪府・中学校教諭)

先生方のご苦労は、よく分かります。GIGAスクール構想という転換期、そして、公教育というユニバーサルなサービスを展開する上で、そういった意見とは対峙しなければならないでしょう。
先生自らが「習っていないから分かりません」の解消を心から望み、「学習者の自ら調べ学ぶ力」の重要性を、時には国や専門家の言葉を借りながら、自分の言葉で真摯に話すことが必要になります。大事なことは、そうした行為は、転換期における保護者への説明責任の一部だということです。それは文部科学省や教育委員会が担うべき部分も大きいため、連携して説明し、理解を得るべきかと思います。微力ながら応援しております。

Benesse High School Online|ベネッセハイスクールオンライン

ベネッセ教育総合研究所

Copyright ©Benesse Corporation. All rights reserved.