進研ニュース 2002.04 |
特集「学力」を考えるシリーズ 1 「学力」とは何か? |
(編集室)
人には本来、「学ぶ力」が備わっている。
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自由な学び方で成長する子どもたち
フリースクール「東京シューレ」(以下、シューレ)は、なんらかの理由で学校に行かなくなった・行けなくなった子どもたちの居場所であり、学びの場です。現在、東京都内三か所のスペースに、およそ二百人の子どもたちが通ってきています。 固定観念に縛られている?今、さかんに議論されている「学力」とは、知識の量のことではないでしょうか。私は、学力とは、「学ぶ力」のことを言うのだと思います。人は、石器時代から今日まで、環境から学びながら生きてきました。いわば、「学ぶ力」は、生まれながらに備わっているものだと思うのです。子どもたちは、大人が考えもしないようなことを発想したり発見したりします。大人より子どものほうが、ずっと「学ぶ力」があるように思います。それを、「今の子は学力がない」「学ぶ意欲に欠ける」と思うのは、「これを身につけるのが学力だ」「これが学習である」という固定観念に縛られているからではないでしょうか。世の中は大変な速度で動いています。子どもたちはそのことに敏感です。そうした子どもたちとのギャップが、「今の子は学力が低下している」と言わせているのかもしれません。 必要を感じれば“セマベン”もする
東京シューレには、開設当時から「ヒロベン」「セマベン」という言い方がありました。「ヒロベン」とは「広い意味の勉強」ということで、さまざまな体験や生活の中で学んでいること。「セマベン」は、国語や数学などの「狭い意味の勉強」を指します。子どもたちは、「大人たちはセマベンばかりさせたがる。でも、何をしても、広い意味の勉強になっている」と当時からさかんに言っていました。 心が安定すると学びたくなる
人には本来、学ぶ力が備わっていると言いました。したがって、子どもたちのために大人がしなければならないのは、主体を育てることだと思います。 大人にできるのは情報提供
「自由」と「個の尊重」とともにシューレで大切にしていることは、「自治」です。そのためには、週一回の「子どもミーティング」が重要です。講座のテーマから、活動や行事の検討、シューレ内で起こった問題など、すべてがここで話しあわれ、決定されます。例えば、「ログハウスをつくりたい」や「ユーラシア大陸を鉄道で横断しよう」などの大きなイベントの提案も、子どもたちが呼びかけてつくった実行委員会から出されます。彼らはそれを度重なる議論や修正、再提案を繰り返し、一つひとつ実行に移していきました。そしてそれが、子どもたちの自信となりました。 東京シューレ王子の時間割。すべて子どもたちが提案した授業・講座だ。
途中から参加するのも、空いている時間に授業・講座を新設するのも可能だ。 |