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新しい評価と高校入試 取り組み事例4
北海道苫小牧市立緑陵中学校
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●取り組みの要点 |
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- 緑陵中学校は、2001年度、国立教育政策研究所の教育課程研究校に指定され、新しい評価にかかわる研究を行ってきた。その成果として、新教育課程で用いる評価規準および評価方法を冊子にまとめ、4月からはそれを用いて評価活動を実施してきた。
目に見えた変化としてまず挙げられるのは、先生方が生徒に関する情報交換をこれまで以上に活発にするようになったということ。評価を意識して、授業も変わってきた。
- 一方、実際に規準・基準表を使って1学期の評価を終えたところで、見直しが必要なところが出てきた。日常の実践に合ったようなものに変えていく必要を感じて、先生方は検討を加えている。
- 同校は、2002~2004年度の文部科学省の学力向上フロンティア校としての指定を受け、学力の底上げのための試みをスタートしている。現在取り組んでいるのは、選択の時間を利用しての数学と英語の習熟度別授業である。そのほか、朝の読書や家庭学習の指導など、長い目から見ての対策も必要と考え、取り組みを開始している。
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●基本情報 |
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曽宇勝治校長、生徒数427人、12学級(教育相談教室3含) |
●学校住所 |
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〒059-1272 北海道苫小牧市のぞみ町3-10-1
電話 0144-61-2727 FAX 0144-61-2728 |
●学校の環境 |
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北海道南西部の町・苫小牧市は、自動車関連を中心に企業が進出し、工業都市として発展している。緑陵中学校は、市の中心部から西へ車で30分ほどの新興の住宅地にある。苫小牧市14番目の中学校として1998年に開校したばかりで、真新しい校舎からは樽前山の雄大な姿やはるか太平洋をも臨める。保護者のほとんどは市内や近隣の町に通勤し、共働きも多いが、学校の活動には協力的で教育への関心は高い。 |
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■新しい評価の研究に取り組んだことで、生徒を多面的に評価しようと先生方同士の情報交換が活発になり、授業も変わってきた■
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●先生が多面的にみてくれるのがわかると、生徒も意欲を出す
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緑陵中学校は、2001年度に国立教育政策研究所の教育課程研究校に指定され、他校に先駆けて新しい評価規準づくりに取り組んだ。しかし、絶対評価によって初めての通知表をつけ終えた1学期末、先生方から戸惑いの声が聞こえてきた。
「夏休みも冬休みも返上して、短期間の強行スケジュールで大変な思いをしてつくったのですが、計画と現実との間にずれが出てきたんです。市内の他校からも同様の声が聞こえてきました。まだまだ修正が必要です」と笹森満明教頭は話す。
しかし、1年間取り組んだことで、先生方の姿勢は確実に変化してきたという。
「職員室で見ていると、先生方が一人の生徒に関して情報交換をしている姿をよく見かけます。『○さんは最近とても意欲的になっていますが、先生の授業ではどうですか』とかね。生徒を多面的に見ようとする努力の表れだと私はみています」(笹森教頭)。
相対評価では、ペーパーテストのウエイトが高く、子どもの情報の多寡に悩むことはなかった。しかし、新しい評価では、そうはいかない。
「自分の考えをまとめてノートに書かせたり発表させたりする場面を、前よりも意識して取り入れるようになりましたね」と教務主任の今野教子先生。
生徒も、先生が自分を多面的に見てくれるのがわかると、意欲的になってきた。
「これまでは評定の配分が決まっていましたので、断腸の思いで低い評価をつけたことも少なからずあります。これまで4しかつけられなかった子に、5がつけられるというのは、教師にとっても喜びです」(笹森教頭)
通知表を受け取った生徒や保護者の反応はどうだったのか。
「まったくクレームはありませんでした。だからといって、手放しで喜んではいられません。評価としては甘い面もあるのかもしれません。とにかく、もう少しやってみないと、私たちの規準や方法がよいものかどうかは検証できません」(曽宇勝治校長)。
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●日常の実践に使える評価への改善が課題
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反省すべきはどんな点だろうか。
「評価のことが頭から離れず、休み時間もノート点検に追われている先生の姿を目にすることも多くなりました。今日はこの子の変容を見ようとか、今日はこの観点のみの評価と限定して、自分を追いつめないことも大事だとアドバイスしています」(笹森教頭)
「評価のための評価になってしまって、肝心の授業の中身の検討を十分にできなかったという反省の声も出てきました」(今野先生)
「きちっと評価しようとすればするほど、先生方の作業量は膨大になります。細かすぎる規準よりは、例えばこの点を押さえれば、この授業の理解度がわかるという規準をはっきりさせて、もう少し、日常の授業実践に合ったような評価に変えていく必要を感じています。なかには、評価をしない授業があってもよいのではないでしょうか。経験を積んだ教師ならば、受け持っている子どもの力はほぼつかめるのです。その感性でつかんだものを客観的に証明する意味で資料を集めるのです」(曽宇校長)
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●中位・下位層の底上げをねらってフロンティア校に
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緑陵中学校は、今年度から3年間、文部科学省の学力向上フロンティア校の指定を受けた。「学力向上フロンティア校」とは、文部科学大臣が今年初めに発表した「学びのすすめ」を実践し、確かな学力を向上させるための特色ある学校づくりを推進する拠点校である。教育課程の研究を終えたばかりなのに、すぐに次の指定を受けるのは、負担にならないのだろうか。
「4年前、開校した当時は、民間の教育団体が実施する実力テストで、市内で1、2の悪い結果でしたから、わが校に失うものは何もないのです。特に中位・下位の生徒たちの底上げをねらっていかなければ、全体の向上はないのです」(曽宇校長)
今取り組んでいるのは、英語と数学の習熟度別学習だ。選択の時間のうち、3年生70時間、2年生35時間、1年生15時間がそれに充てられる。基本・標準・発展の3コース、クラスとしては6つに分けて少人数指導を行っており、1クラスはほぼ20人弱だ。中位・下位の底上げをねらうという言葉通り、基本に2クラス、標準に3クラスが充てられていた。必修の時間とは別の独自の教材で行うが、基本的には先生の手作りのプリントだ。
「今後は必修の時間にどんな取り組みができるかを検討しなければなりません。学力テスト、到達度テストなども実施し、数値目標を掲げての追跡調査も必要です。そうした短期的目標を掲げた指導と同時に、長いスパンで漢方薬的な効果を期待して、朝の読書指導、家庭学習の指導にも着手しました」(曽宇校長)
1年生に家庭学習の習慣づけをするために、家庭学習ノートを一冊ずつ持たせ、毎日提出させる試みもスタートした。提出状況がよくない生徒は、放課後に集めて「愛の勉強会」という名の個別指導もしている。
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■習熟度別の数学、基本(写真左)と発展(写真右)の授業。基本コースでは、小学校の復習からスタートした。
先生と一緒に例題を解いたあと、プリントを使ってどんどん問題を解いていく。
発展の教室では、キットを使って正多面体を作り、なぜ6種類しかないのかを考えさせていく。
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