新しい評価と高校入試 取り組み事例9
大阪府高槻市立第四中学校


●取り組みの要点
  1. 高槻市立第四中学校では、1987年から、地域ぐるみで学力向上に取り組んできている。
    学力診断テストを導入したり、個別指導を実施したりした結果、高校進学率が伸びたが、新たな課題も出てきて、「自ら学び、取り組む力」を育てるために就学前教育、家庭教育にも力を入れてきた。
  2. 長年の成果のうえに、現在では、「授業づくりへの挑戦パートⅡ」に取り組んでいる。専門家などを招いた授業で、自分が社会とつながっていることを感じさせたり、「総合的な学習の時間」の「自分探しの旅」のなかで、大学、専門学校訪問をし、夢を広げさせるようにしている。
  3. 普段の授業のなかでは、とりわけ必修教科にこだわり、チームティーチング、少人数授業などを通して、基礎・基本を定着させる授業づくりに挑んでいる。


●基本情報
下村昭夫校長、生徒数325人、10学級(養護学級1含む)
●学校住所
〒569-1144 大阪府高槻市大畑町4番4号
電話 072-695-0404  FAX 072-695-0405
●学校の環境
高槻市は大阪平野の北東部にあり、大阪と京都の中間に位置する人口約35万人の衛星都市。淀川と西国街道を持つ交通の要衝の地であったため、古代から多くの歴史を育んできており、遺跡も数多く残る。
第四中学校は市の西端に位置し、室町時代から門前町、酒造りの町として栄えた南部地区と、大規模工場と大型スーパーなどが立ち並ぶ北部地区とからなる。1992~94年、文部省の同和教育研究校に指定されて以来、人権教育を学校経営の柱の1つにしてきた。地域とのつながりも深く、校区内の幼稚園・保育所、小学校、高校と連携し、さまざまな取り組みをしている。



■将来の夢を育てる学習と基礎・基本重視の授業づくりで、学力向上を目指す■

●地域ぐるみで学力向上に取り組んで15年
 高槻市立第四中学校は、学力問題がクローズアップされるずっと前から、学力向上に取り組んできている。
 取り組みを始めたのは、15年ほど前。同校の高校進学率が著しく低下した時期があり、学校、地域等で「学力保障プロジェクト」を発足させた。具体的には①学力診断テストの導入、②個別指導などの実施、③人権学習の強化などを通して、授業づくり・授業改革を試みてきた。
 そのおかげで高校進学率は上がった。だが、新たな問題も出てきた。高校に入ったものの、中途退学する生徒が増えてきたのである。そこで、「0歳~18歳までを見通した教育で、子どもたちに『自ら意欲的に学び、取り組む力』をつけていくことが必要である」との反省から、1990~94年は、特に就学前教育や家庭教育に力を入れてきた。
 そして、1995年からは、校区内の小学校や高校などとともに、公開授業、地域教育研究集会を開くなどして、ともに教育を考える場を提供。このように、同校では、学力向上を最重要課題として一貫して取り組んできた。これが、1999年度までの「授業づくりへの挑戦」のいきさつである。
●専門家の授業や大学訪問で将来への指針を持たせる
 長年の取り組みが、生徒たちの学力の底上げになったことは確かである。しかし、今の子どもたちに共通の「自ら学ぶ意欲」が弱いという課題を強く感じて、2001年度から、「授業づくりへの挑戦パートⅡ」に取り組んでいる。
 今の子どもたちに学ぶ意欲を持たせるには、自分が学んでいることが「社会とつながっている」「自分の生活や将来像と結びついている」と意識させる必要がある。先生方は、日々の教科学習でも、「総合的学習」でもそれを心がけるようにしている。
 具体的な手法として、専門家などのゲストティーチャーに授業に来てもらったりしている。例えば、3年生の理科の授業に、京都大学阿武山地震観測所の中村佳重郎先生を招き、「地震はなぜ起きるのか」といった話や高槻市周辺の地層の状況などについて話してもらった。この授業は地域にも公開して、地域の方に、地震や防災について考えてもらうきっかけにもなった。また、3年生の家庭科「命について考えよう」というテーマのときは、保健所の保健師さんに来てもらい、養護教諭にも加わってもらって、多角的な視点での学習ができた。ほかにも、企業に協力を求めると、快く専門家を派遣してくれた。専門的なことをやさしく話してもらうことで、生徒たちは、今の学習が社会につながっていることが実感できるはずである。
 学習意欲を高めるための同校のもう一つの手段は、3年生の総合的学習の「自分探しの旅」として、大学や専門学校の訪問をしていることだ。始めた理由は、1999年、生徒に生活実態アンケートをしたところ、勉強がよくできる生徒さえ、「大学に行こう」と思っている生徒が非常に少なく、さらに将来の仕事に対する意欲も低いことがわかったからだ。
 幸い高槻市及び近隣には、医科大学、外国語大学、看護短大、芸術系大学…と、さまざまな分野の大学・短大、専門学校が立ち並ぶ。そのうちのいくつかの大学に、地域の方々の協力で訪問が実現した。高校訪問は多くの学校で実施しているが、大学の例はあまり耳にしない。将来の職業につながる大学、専門学校を見てみることで、生徒たちの視野が広がるとともに、指針が具体的になるかもしれない。
「生徒が大学の充実した設備に感動したり、キャンパスを見て、大学って楽しそうだ、行ってみたいと思ってくれるだけでもいい」と先生方は思っている。
●教科の実践構造図をつくり、地道な授業改革に取り組む
 ゲストティーチャーの夢のある話、大学訪問など、トピックスは生徒への大きな刺激になるが、それだけでは基礎・基本の力をつけられないと考えた先生方は、普段の授業改革にも着手した。
 まず、新学習指導要領の実施を機会に、学校としての基礎・基本のとらえ方を明らかにした。つまり、各教科の基礎基本を、①知識・技能、②学び方、③自ら学ぶ意欲の3側面からとらえなおし、実践構想図としてまとめ、日々の授業で常に意識するようにした。
 具体的方策としては、例えば、国語、数学、英語で全学年、チームティーチングと少人数授業を実施。国語の1、2年生では、コミュニケーション能力を高めるため、週1時間を創作活動、コミュニケーションのための時間として確保。参観したときは、ビデオを視聴して感想文を書く活動をしていたが、ていねいな個別指導で、文章を書くことに抵抗感がなくなりつつあるという。そのほか数学・英語では、習熟度別授業が展開されているが、基礎コースほど人数が少なく、ベテラン先生が配置されており、学力の底上げをしようという意図が明確に感じられた。
 その結果、例えば英語では、英検3、4級を受ける生徒が年々増え、準2級に挑戦する生徒も出てきた。また、高校の英語科・国際科に行きたいと進路を明らかにする生徒もいる。先生方は、直接、間接の学力向上策が生徒に力をつけ、夢を育んでいるという手応えを感じている。
2年生英語・発展コースの授業。20人を超えるが、生徒は集中している。「魔女の宅急便」を題材に、動詞をチェックしていく。



2年生数学・基礎コースの授業。教材は、手作りプリントが基本。机間巡視でていねいに指導している。




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