新しい評価と高校入試 取り組み事例10
大阪府枚方市立第四中学校


●取り組みの要点
  1. 大阪府教育委員会で勧めている学校評価を、枚方市立第四中学校でも積極的に取り入れ、その結果をもとに授業改善に着手した。
  2. 通知表も「見やすく・わかりやすい」をモットーに、観点別評価をより重視し、10ページにも及ぶ分厚いものになった。
  3. 大阪府の高校入試の内申書は、相対評価が採用されるため、通知表の評価内容とは違ってくる。しかし、同校では、評価過程を生徒・保護者に説明し、知りたい生徒・保護者には、結果も開示している。


●基本情報
池田利貞校長、生徒数824人、23学級(養護学級2含む)
●学校住所
〒573-0084 大阪府枚方市香里ケ丘5-3-2
電話 072-854-0865  FAX 072-854-4645
●学校の環境
枚方市は京都府に隣接し、古代より京都-大阪を結ぶ交通の要衝として発達してきたため、古墳群や寺院跡など数々の遺跡が残っている。第二次世界戦後は、大阪のベッドタウンとして大規模団地が造られ、人口も急増。現在は約40万人を抱え、大学・専門学校も増え、学園都市としても発達してきている。
第四中学校は、市の中心部から車で15分ほどの閑静な住宅街の一角にあり、校舎・校庭も豊かな緑に囲まれている。2001年4月、隣接する村野中学校と統合して生徒数が増え、23学級になった。保護者は教育への関心も高い。卒業生の進路は、不況を反映して公立志向が強いが、市外への進学者も少なくない。私立高進学校は25%程度にとどまっている。



■学校教育診断(学校評価)を契機に、授業改善や見やすい・わかりやすい通知表づくりを進める■

●学校評価の回収率80%に、保護者の願いを知る
 学校内外に自校の教育課程・活動を評価してもらい、それをもとに学校運営をすることが、新しい評価の柱の1つである。大阪府教育委員会では、1998年以降、府下の学校に積極的に学校評価の導入を勧めている。枚方市立第四中学校も、学校評価(同校では「学校教育診断」と呼ぶ)を活用して、学校改革を進めている。
 同校では、2000~01年、文部科学省の人権教育研究校に指定されたが、研究の柱を「授業の工夫・改善と豊かな人間関係づくり」に据えた。
 人権教育と授業改善を結びつけた理由を尋ねると、
「私がこの学校に赴任した2000年度、保護者・生徒・教職員に、『学校教育診断』をしてもらいました。すると、教員の『指導の改善・工夫に努めている』という項目の評価が非常に低く、生徒の『授業がわかりやすく楽しい』の評価も低かったのです。研究をするなら、まずは、身近な足下の課題を柱にすることが必要だと感じたからです」
と、池田貞利校長先生。
 第四中学校は、保護者の教育への関心が高い地域である。「診断」も80%以上の回収率だったという。しかもそこには、学校への注文がびっしり書かれていた。
「それによると、保護者が本校の教育に必ずしも満足していないことがわかりました。しかし、それだけ書いてくれるということは、期待されているということでもありますので、これから、保護者の信頼を得られるように努力しなくてはと考えたのです」(池田校長)
●わかりやすく、見やすい通知表を工夫
 授業改善の第一歩として、先生方を先進校に派遣。先生方は研修で刺激を受け、授業研究の必要性を痛感して帰ってきた。2002年度に入って、全員が年1回は研究授業をすることになり、教室にビデオを設置して、教師と生徒とのやり取りを録画。それをもとに議論することから始めた。そして、全員が年1回は研究授業をすることになった。また、加配を受けて、2年生全クラスで英語と数学で少人数授業、3年生の選択では数学と英語の習熟度別学習を実施している。
 その結果、先生方の「指導の改善・工夫に努めている」という項目は、2001年度には大きく数値が上がり、「ややあてはまる」も合わせると、8割近くになった。さらに2002年度はほぼ10割に近づいている。しかし、池田校長は「少人数授業や習熟度別授業については、やっと緒についたばかりで、満足していません」と要求水準を高くしている。
 通知表を改善したのも「通知表は適切に評価できるように工夫されている」という項目の保護者評価が低かったことを受けてのことである。
 同校の通知表は、10ページにも及ぶ冊子になる。各教科1ページずつに、別に選択履修が1ページ加わる。紙面の多くは、観点別の評価に割かれているが、評価の仕方は、教科によって少し違う。国語のように「関心・意欲」「表現」「読解」「言語」と4項目別について、「提出物をきちんと出せる」「授業に意欲的に取り組んでいる」という観点別に評価する教科と、数学のように、「正負の式」「文字の式」といった学習単元ごとに観点を決めて評価する教科がある。前者の場合、学力の要素ごとに自分の長所や弱点がわかるが、後者の場合、授業のどの分野がよく理解できていて、どの分野でつまずいているかが具体的にわかるというよさがある。
「少なくとも教科内での規準・基準は統一しました。しかし、教科の独自性は尊重しています。今後どうしていくかは、もう少し検討していきたい」(池田校長)
●進路資料の相対評価情報は、生徒・保護者に開示
 ところで、2003年春の高校入試の内申書に、大阪府では、従来通り、10段階の相対評価を採用した。これは、生徒が学期末に手にする絶対評価の通知表とは違う内容のものだ。高校入試を迎える生徒・保護者にとっては、この評価がどのようにして出され、どのような内容になるかは、不安である。
「通知表は生徒のよいところを評価しようというものですが、進路資料は選抜のために使うもので、まったく性質が違います。ただし、評価の材料は定期テスト、実力テスト、提出物…等々、絶対評価と重なる部分が多く、相関関係はあります。出し方としては、総合点を出して学年内で順位をつけ、10段階にします。この出し方については、これまでも3年生および保護者に説明し、知りたい生徒には結果も開示してきました。もちろん志望校を選ぶときの指標にもしています」(田村教頭)
 こうした努力が保護者にも理解されつつあるためか、通知表の項目だけでなく、2002年度の「学校教育診断」ほとんどの項目で前年度を上回っている。
枚方市立第四中学校の通知表の一部。国語と数学。







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