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学校改善につながる学校評価を進めるための8つのポイント

善野八千子先生
●善野八千子
大阪府教育センター企画室主任指導主事
ぜんの・やちこ●大阪府堺市立南八下小学校教頭・同市立美木多小学校教頭を経て、2001年、大阪府教育委員会事務局大阪府教育センター学校経営研究室主任指導主事に。2002年から現職。大阪府の学校教育自己診断の研究を中心になって進めている。国立教育政策研究所「学級経営等の在り方について」の調査研究委員ほか。著書は、『学校経営マネジメントの秘策』(教育出版)ほか。
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学校改善につながる
学校評価を進めるための
8つのポイント
学校評価のための評価項目の設定や具体的な進め方で戸惑っている学校も少なくない。全国に先駆けて学校教育自己診断を実施した大阪府では、2001年度から診断の活用状況の調査・研究を進め、『学校改善への道筋』(大阪府教育センター、03年3月刊)という刊行物にまとめた。研究推進メンバーの善野先生に、学校改善につながる学校評価の進め方のポイントをうかがった。
[ポイント1]
学校評価は、教職員が共通理解を図る手段
 1998年の試行以来、大阪府内の小・中・高校の学校教育自己診断(以下、自己診断)実施率は年々増加しています。しかし、その数字ほどには学校改善は進んでいません。その理由は、「なぜ自己診断をするのか?」という目的が明確でないまま実施したからでしょう。
 「診断を受けると変わるんだ」と思っている学校は少なくありません。しかしそれでは、つねに後手後手に回ることになり、「学校のことをわかっていない保護者に言われたことに、なぜ振り回されなくちゃならないんだ」という不満も出てきかねません。
 学校評価は、教職員が共通理解を図るための手段の一つなのです。問いかけることによって、「学校は保護者にこう見えているんだ」「このように評価されているんだ」というデータを得る。診断の目的のところで、こうした発想を持つことがまず大事です。
[ポイント2]
校長が課題と感じるポイントにしぼって「たたき台」を示す
 どんな内容で診断をしてもらったらいいのか?
 大阪府では、自己診断の敷居を低くするために、評価項目のひな型を示しました。それを学校の実態に沿って、修正や追加をして使っています。
 議論をしやすいように、たたき台を示せるかどうかが校長のリーダーシップ。先生方が普段努力していること、きいてほしいこと、弱いと自覚していることが無理のない項目数で入っていること。
 注意したいのは、あれもこれもと、広げすぎないこと。自己診断を実施した学校から上がってきた課題の一つが、「集計の負担感」です。問う内容がはっきりしている学校では、初めから「10項目」と決めてつくり始めても構わないと思います。
 例えば、「頑張っているポイントを5項目、弱い部分を年度末反省のなかから5項目」というようにわかりやすい提示をしてみてはどうでしょう。
[ポイント3]
項目決定は課題共有のプロセス。保護者・地域も巻き込もう
 評価項目をすべて学校だけで決定するのではなく、保護者も巻き込んでつくる方法もあります。例えばある中学校では、学校協議会で項目から協議しました。「学校が楽しい」という項目(生徒対象)について、「その中身を調べてみる必要があるのでは」という委員の声があり、2次設問に「悩みを相談できる友人がいるか」「楽しくつきあえる友がいるか」など、保護者と学校とで吟味したうえで友人関係にかかわる項目を入れました。
 この項目決定のプロセスこそ、学校課題を共有するプロセスになります。
[ポイント4]
両極端の結果が出た場合、平均化してはいけない
 評価を実施すると、両極端の結果が出ることがあります。例えば「総合的な学習の時間」の取り組みについて、「充実している」という回答がほとんどであったのに、ある学年だけ「そうとは思えない」という回答が多く、フリーアンサーで、「何をしているかわからない」という声があったとします。それを、「『総合的な学習の時間』はほぼ充実している」とならしてまとめてしまっては、学校の本当の姿は見えません。その学年のどこが他学年と違うのか、どうしてそんな声が出てくるのかを考えることが、分析です。
 ある小学校では、分析のメンバーに統計の専門家を入れていました。結果をどう見るか、スーパーバイザー的な存在に助けてもらうのも一つの方法です。
 
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