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実践事例
 
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■実践事例2
東京都 品川区立平塚中学校の取り組み
外部評価委員の積極的参画で
小規模校ならではの学校評価
外部評価者委員会は応援団
 平塚中学校は、外部評価委員会の取り組みに特徴がある。同委員会は、2002年度から始まった品川区の外部評価者制度(表1)に則ってつくられたものである。
品川区の外部評価者制度
▲表1 品川区の外部評価者制度の概要

 平塚中学校が今抱えている最も重い課題は、生徒数の減少である。学校選択制が実施された2001年度の入学者が39人、02年度が25人、03年度は13人と大きく減少し続けており、このままでいくと、来年度は区内でいちばん生徒数が少ない学校になるという危機感を先生方は持っている。
 生徒減少の理由は、「3、4年前まで学校が荒れていたこと」(渡辺幸夫校長)。今はすっかり学校も落ち着いたのに、地域の人々にはそのときのイメージが払しょくされていないことから、旧学区の生徒たちが近隣の中学校に流れていったと思われる。加えて、「生徒数が少ないと、学校に活気がないと思われてしまう。PR不足もそれに拍車をかけていると思います」(渡辺校長)
 もちろん、先生たちは手をこまぬいているわけではない。
 その先生方の応援団的存在になっているのが、外部評価者委員会だ。同委員会は評価活動が目的でつくられており、年3回の開催が基本となっている。しかし、同校の場合は、それにとらわれずに、03年10月末現在ですでに6回の会合や教職員との協議会がもたれており、そのほか評価活動の枠を超えて、行事などの折りごとに、必要な提言をしてもらっている。
 というのも、委員長である学識経験者が元中学校校長。厳しい評価もするが、生徒が減ってしまった学校を教職員と一緒になってなんとか立て直したいという思いを強く持っているからである。
 授業改善、とりわけ授業評価に関しては、担当教諭と突っ込んだ話し合いもしながら、少人数であることを生かした評価についての研究が進められている。具体的には、個人内評価などの方策を検討中。
平塚中学校の外部評価の観点(抜粋)
▲表2 平塚中学校外部評価項目から。そのほか、「学校の総体に関して」「基礎学力の定着に関して」「社会性・人間性の育成に関して」「保護者・地域との連携に関して」(区内共通の観点)で評価してもらっている

保護者の声をすぐ改革に反映できる
 平塚中は、校長、教頭を除けば、生徒にかかわる教職員は20人。だから、外の声に対しても、すぐに対応して改善ができる。
 「回りくどいことをしなくても、どんどん声が入ってくるのが小規模校のよさであり、教職員の意思疎通も早い」と渡辺校長は語る。
 学校選択制で平塚中を選んだ保護者は、学校への愛着も強い。だから足繁く学校に来てくれる。生徒数の減少には教職員以上に心を痛めていて、生徒増につながるさまざまなアイデアも出してくれる。
 例えば、「学校案内」もPTA独自でカラフルなものを作り上げた。PTA主催のサマーフェスティバルでも、「小学生を呼ぶためには保護者にも来てもらわなくては」と、近隣の小学校のPTAに声をかけ、模擬店を出してもらうことに。PTAの熱意に、先生たちも全員出勤、保護者と一緒になって準備した。このようなつきあいのなかで、「こうしたほうが」という声が自然に出る。それも学校評価だと先生たちは受け止めている。
保護者も主体的に参加する学校づくり
 外部評価、内部評価に基づいた今年度の学校の方針が、「地域・保護者参加型スクール」である。「大人も一緒に勉強しよう」と、毎月1回授業参観日をつくり、保護者も参加できるような授業を実施。とくに学期に1回は土曜日に実施するようにした。
 さらに、運動会は、保護者を募集して1チームつくり、生徒と互角に競ってもらう。そのようにして、「学校にいる人間を減らさないことを心がけている」(渡辺校長)。
 これらの取り組みが生徒減に歯止めをかけられるのか未知数であるが、昨秋行われた来年度入学予定者の学校説明会には、30人以上の保護者が訪れ、校長先生の説明を熱心に聞いていた。磨き込まれた廊下や中村肇機主事が中心になって作った手作りモニュメントなどに教職員の意気込みが感じられる。小規模校のよさに気づいてもらえるまで、先生たちの努力は続く。
写真1 学校説明会
▲写真1 学校公開週間に行われた、来年度入学予定者の学校説明会。30人以上の保護者が訪れ、校長先生の説明を熱心に聞いていた

写真2 小6の体験授業
▲写真2 保護者説明会と同時に開催された小学6年生向けの体験授業。理科の実験にぐっと引きつけたり、いっさい日本語を使わない英語の授業で、子どもたちにアピール

■平塚中学校データ■
渡辺幸夫校長
▲渡辺幸夫校長
 東京都の東南部に位置する人口約32万8千人の品川区。平塚中学校の校区は、西部の目黒区に近い住宅街や商店街が混在している地域。PTA活動は熱心で、学校をPRしようと、独自のパンフレットを作るほど。「光輝く 若葉のみどり いつも心に もえたつ陽炎」と歌う校歌は、サトウ・ハチロー作詞、松田トシ作曲で同校の誇りの一つ。
〒142-0051 東京都品川区平塚3-16-26
TEL 03-3782-0028 FAX 03-3782-1600
校長/渡辺幸夫先生 生徒数/81人、学級数/3
 
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