グループ学習で「学び合う教室」に |
グループの構成は、各4、5人程度で、教員が生徒の習熟度や性格などを考慮して編成し、単元ごとに変えていく(図2)。 |
▲図2 2年生の少人数授業のグルーピングの例。学級の四つの生活班を二つに分けるという方法で学習集団をつくる
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1学級を二つに分けるときは、四つの生活班を機械的に二つずつに分けており、習熟度などでの選別はしていない。これは同市が少人数授業の導入に当たって、「習熟度別編成はしない」という方針を掲げているためでもあるが、総合主任の武内浩二先生は、「少人数授業では『学び合う教室』をめざしている。わかる生徒とわからない生徒の両方がいないと、教え合い、学び合うことはできない」と強調する。また、教務主任の河村先生は、「同じような理解度の生徒だけを集めたら従来の一斉指導のほうが効果的だが、それでは『授業改善』につながらない」と言い切る。
同校は、少人数授業でのグループ学習の方法についても研究をしている。代表的な取り組みの一つが、ホワイトボードを活用した授業(図3)だ。 |
▲図3 少人数授業でのホワイトボード(WB)の活用例。解法を記入するときはグループの机の中心に置き、グループの全員に解説するときは、台に立てかける。WBを置く台は、キャンバスを立てかける美術のイーゼルを使用。小さなWBは、一斉授業には適さないが、少人数授業なら、小さな文字でいっぱいになっても、グループ全員が見ることができる
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四つの班に、別々の問題を解かせ、各班ごとに置かれたホワイトボードを使って、解答方法をそれぞれ発表させる。各班ごとに解く問題が違うので、グループ学習の発表につきものの同じ内容のくり返しによる緊張感の緩みがなくなるうえに、授業の効率化も図れるという。
また、「この問題を解くのは、自分たちのグループだけ」という緊張感が生まれ、グループ内で責任を持って問題解決に取り組むという姿勢も出てくる。異なる問題を同時に解くそれぞれの班に、先生がアドバイスを与えていけるという少人数授業ならではのメリットを最大限に活用した実践といえるだろう。
一方、習熟度別指導はしないという原則を掲げている同校だが、まったく習熟度別指導をしていないわけではない。数学の「一次関数」のように生徒の理解度に開きが出やすい単元では、単元テストのあとに、「ベーシックコース(基礎・基本)」と「アドバンスコース(発展)」の二つに分け、習熟度別の指導をしている。どちらのコースに入るかは、生徒本人の選択で決定し、人数調整など教員による振り分けは行わないという。 |
教員間のコミュニケーションが活発に |
同校を訪ねた日は「学校公開日」で、少人数を中心とした授業が公開されていた。一斉指導で説明したあとにグループ学習に移行する教室、最初からグループ学習で行っている教室など、同単元、同内容にもかかわらず、担当する先生によって教え方は異なっていた。
「授業の進め方は教員ごとに違って当たり前。ただし、共通の内容をきちんと押さえておかなければならないので、教員同士の打ち合わせは欠かせない」と河村先生は説明する。実際、少人数授業を始めてから、それまで教科部会などでしか話し合うことがなかったのに、日常的に打ち合わせを迫られたことで、教員間にコミュニケーションが生まれてきたという。
さらに、少人数授業では教員と生徒が話し合う機会が多いために、教師と生徒の距離も縮まったようだ。 |
▲写真1 グループ学習による少人数授業では、教員は生徒へのアドバイザー役に徹している。普段の授業では沈黙しがちな生徒も、少人数授業では気軽に質問したり、発表したりできる
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少人数授業は、指導改善の道具に過ぎない |
その一方で、校務の多忙化により十分な打ち合わせの時間がなかなか取れないことが課題となっている。少人数授業によって、教員と生徒のコミュニケーションが円滑になった半面、生徒の規律が低下しているのではないかという懸念もある。数学以外の少人数授業は、まだまだ生徒個人が本当に「自分で学んだ」という段階まで達していないことも課題に挙げられている。
このような課題を残しながらも、河村先生は次のように語っている。
「少人数授業は指導改善の道具に過ぎない。成果は、他の教科も含めて教員がどれだけ柔軟になれるかにかかっている。かたちだけ少人数授業を導入しても意味はありません」 |
▲表1 少人数授業・TT授業における教員増と実施教科
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