学習意欲の研究から習熟度別授業を実施 |
富士宮第四中学校は、富士宮市教育委員会の研究指定を受けて、1998年度から翌年度まで「生き生きと活動する個・集団の育成」、続いて2000年度から02年度までは「生き生きと意欲的に学び続ける生徒の育成」と、合わせて5年間にわたって、生徒の学習意欲を高め、その意欲を継続させるための実践研究に取り組んできた。
研究指定校としての実践から、子どもの学習意欲が高まるきっかけは、
(1)興味がある課題に出合うとき、
(2)生徒同士や教員とのかかわりで刺激を受けたとき、
(3)成就感を味わったり、自己効力感が高まったとき―
などであるとわかった。そこで、授業を「興味ある課題が生まれるような導入」「複線化し個々に教師の支援が適切になされる場の設定」「目標達成度を診断し、振り返ることができるまとめ」という3段階でとらえるのと同時に、授業のなかで、「課題を十分に把握したか」「目標に近づく追究がなされているか」「目標達成ができたか」の三つの評価を行うことで文字通り「指導と評価の一体化」の必要性を打ち出した。この具体化の試みの一つが、習熟度別コースによる少人数授業だ。牧野哲校長は、「この研究を通して、教員の間に子どもたち一人ひとりに着目する姿勢が生まれ、子どものつまずきを予想し、それに対応して子どもを支援する授業を組み立てることができるようになった」と話す。 |
コースは生徒自身が選択 |
同校は、2001年度から県による少人数加配を受けて、習熟度別コースによる少人数授業を実施しているが、2002年度には静岡県教育委員会の「学力向上フロンティア事業」研究校(研究期間3年間)の指定を受けている。
少人数授業は、2学級を習熟度別の3コースに分けて行われ、対象教科は01年度まで数学のみだったが、02年度からは英語にも拡大された。
ただ、生徒減少による学級減のために教員定数が削減された関係で、今年度の実施学年は、数学が1年と3年、英語が2年と3年となっている。
習熟度別コースは、両教科とも各3種類で、数学は「基礎コース」「中間コース」「発展コース」、英語は「ベーシックコース」「スタンダードコース」「アドバンストコース」とそれぞれ名づけられている。このうち基礎・基本の内容を重点的に指導する「基礎コース」と「ベーシックコース」は、定員18人程度と他のコースよりも少なめに設定されていて、担当者も担当学年のベテラン教員が当たっている。これに対して、中間・スタンダードと発展・アドバンストコースは、定員28~30人程度という規模である。
生徒のコース選択は、4月に保護者と生徒から希望を取り、最終的には4、5月の授業の成果などをみながら教員と生徒が相談して決定していく。教員による習熟度判定ではなく、生徒本人の希望によるコース選択にしたのは、「能力別」という批判が保護者などの一部から出ることを懸念したこともあるが、それよりも「自分がどういう勉強をしたらよいのか、子どもに考えさせる。自分の能力を判断することも、ある意味で習熟度別指導の一環」(牧野校長)という理由のほうが大きいようだ。
コースは、年二、三回、定期テストの終了ごとに、希望調査(図1)や面接により入れ替えをしている。各単元ごとに所属するコースを生徒に決定させたほうがよいという声もあるが、単元ごとにコース編成が変わると、生徒評価の教員間の引き継ぎに時間がかかるし、ある程度の期間、固定したほうがよいということだ。 |
▲図1 富士宮四中の「少人数指導コース希望調査票」。保護者にコース選択の希望を聞いたうえで、最終的には教員と生徒が話し合って決定。生徒選択が基本だが、教員の判断で生徒と相談のうえ、基礎コース希望の生徒を中間コースに変更することもある
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