ベネッセ教育総合研究所
特集 中学校のキャリア教育を考える
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13歳に向けて、職業選びの動機づけになる
見取り図がつくりたかった
仙崎 この本には514種類の職業があげられています。それを自然科学やアートなどの6分野に構成されていますが、この枠はどのように設定されたのですか。
村上 俗にいうサラリーマンはまず除外したんです。あるトレーニングをした人にとっては、サラリーマンになるのは、比較的簡単なんですよ。でも普通のサラリーマンがいきなり技術職とか研究者になるのはまず無理ですから、なるのが難しいほうから決めていこうと思ったんです。
仙崎 私はよく先生方に、中学生の段階では具体的な仕事ではなくて、「群」をまず考えさせるのが大事だと言うんです。例えば職業マップ(図1)では、横軸の左には人にかかわる仕事、その反対側には機械や道具を使ってものをつくる仕事、それから縦軸の上は事実や記録を扱う仕事。縦軸の下にくるのはアイデアです。例えばファッションデザイナーとか車の設計などですね。この四つの「群」のうちのどれにいちばん興味を持つのか。まずは「群」で職業を絞り、その群にはどんな仕事があるのかを調べさせる。そういうふうにして仕事調べをさせるべきだと言っているんです。
図
村上 基本的な考え方は似ていますね。
仙崎 ですからこの『ハローワーク』の枠を見ながら、そういうお考えで立てられたんだなと思いました。
 それで、この本を読んだ現場の先生方から聞いたことがあるんですが、この本には、確かにいまの中学生がなりたい職業が並んでいるけれど、仕事の解説が少し足りないような気がする。一つひとつの仕事について、どんな教育や資格、技能が必要かなど、もう少し詳しく書いてほしかったという声を聞いたんですが。
村上「とっかかりのほうがいい」と思ったんですよ。「とっかかりでもいい」じゃなくて。本を読んで宇宙飛行士に興味を持った子どもが、実際に宇宙飛行士にならなくてもいいんです。何かに興味を持てば、その子はあふれかえっている情報のなかに主体的にアプローチするようになると思うんです。NASAの存在を知って、その関連の本を買うとか、映画を観ていても宇宙飛行士が出てくるシーンはよく観るようになるとか、情報を自分でチョイスできるようになるんじゃないかと思ったんです。13歳のときにこのなかから職業を選んでくださいという本ではなくて、職業というのはこういう分布になっているんだ。大きな世界があって、だいたい自分はどの分野に向いているかなど、動機づけになる見取り図みたいなものをつくりたかったんです。
 もちろん、なかには、好きなことが見つからない子もいると思います。13歳で好きなことがないのは、むしろ当たり前です。でも20歳を過ぎてやりたいことがないのは大問題ですよね。なぜなら好きなことは自分で見つけるしかなく、だれもアドバイスできないからです。だから13歳のときから自分の興味について考えておくと有利ですよということも、伝えておきたかったんですね。


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