●1年生 体験先を自分で探す過程で社会性を身につける |
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▲写真 1年生「総合的な学習」の集大成である社会体験学習の発表会
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大井東中学校のキャリア教育は、「総合的な学習の時間」(以下、「総合的な学習」)を柱に展開している。1年生で社会体験学習、2年生は修学旅行体験学習、3年生では進路を考える会などを実施。後述するが、これらの取り組みのねらいや内容は、1年生の活動を2年生が受け継ぎ、1、2年生の活動を受けて3年生の活動を展開するというように、学年間の積み上げを意識したものとなっている。
まず、1年生の「総合的な学習」のカリキュラムを中心にみていきたい。同校の堀川博基先生は次のように語る。
「1年生の活動の核となるのは、11月に実施される社会体験学習です。生徒たちが公共施設や民間企業で働くことで、仕事の喜びや厳しさを学び、自分の将来を考えることをねらったものですが、この内容をより濃いものにするには、事前事後の活動が重要になります」
図1は、1年生の「総合的な学習」の流れを示したもので、表は、活動を通じて生徒に身につけさせたい能力を11観点に分類したもの。図1の各活動の末尾の数字は表の11観点の数字に該当する。 |
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例えば社会人講演会では、(1)課題設定の能力、(2)問題解決の能力、(6)学習活動への関心・意欲・態度の三つの能力の育成をねらっているというわけだ。このように各活動を通して生徒に身につけさせたい能力を設定することで、教員は目的を定めて指導に臨むことができる。
1年間の各活動の配置も、計画性を持って組み立てられている。まず入学直後には、生徒が小学校までにどんな体験活動をしてきたかを調べることで、生徒のレディネスを把握。次にエンカウンター(注)等を通じて、今後活動に取り組んでいくうえで必要となるコミュニケーション能力の向上を図る。
注 構成的グループエンカウンターのこと。学級開きなどに利用できる人間関係づくりのためのエクササイズなどから成り立っている。
それが終わると、自己発見、課題発見の段階に入る。自己発見では、ワーク活動を通じて自分の性格や興味、適性などを生徒自身が分析。一方課題発見では、大井町の産業や地域の仕事などを調査する。この自己発見と課題発見の双方が有機的に結びつくことで、生徒たちは「社会にはこんな仕事があり、自分はこういうことに関心がある」というふうに、社会のなかでの自分の位置を考えることになる。これを受けて、社会体験学習のための具体的な体験先探しが始まる。
「体験したい職場は生徒自身に決めさせ、自分でアポイントを取らせます。もちろん生徒が連絡すると予想される300ぐらいの事業所には、学校側があらかじめ事情を書いた手紙を送っているのですが、それを生徒は知りません。生徒が事業所に体験を依頼しても断られる場合もあります。今年度も多い生徒は5件に依頼し、やっと受け入れ先が見つかりました。自分の力で体験先を見つける過程自体が、生徒が社会性を身につけるよい機会になると考えているのです」
そしてようやく11月、3日間の社会体験学習本番を迎えるというわけだ。社会体験学習後は。生徒がそれぞれの職場体験を振り返りながら模造紙1枚の「新聞」を書き上げ、2月の発表会で締めくくりとなる。このように1年間の流れを見れば、それぞれの活動が次の活動へと引き継がれながら、メインイベントの社会体験学習へと結実していることがわかる。
ちなみに同校では、「総合的な学習」のさまざまな場面でワークシートを積極的に導入している。(図2) |
▲図2 生徒が自己の課題や調べた結果などを書き込むワークシート
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「ワークシートは毎回のように配り、生徒たちに考えた結果、調べた結果を書かせたり、見つけた資料を貼らせたりしています。こうした作業によって、生徒たちの自己理解、課題追究が深まるわけです。そしてこの積み重ねを1冊のポートフォリオにまとめています。ポートフォリオは、生徒がこれまでの自分の活動を振り返り、考えを整理するときに大いに役立っていますね」 |