ベネッセ教育総合研究所
特集 中学校のキャリア教育を考える
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進路指導主事を1年生の先生が担当
 北星中では実際、職員室にそういう雰囲気があふれている。
 も実は白木先生が作成したわけではない。特別活動部の若い先生に「こういうのがうちにもあるといいんだけど…」と前任校で活用していたものを見せたところ、「すぐに作ります」と動いてくれたのだという。各教科の先生に、関連のありそうな単元をピックアップしてほしいと要請したところ、ベテランの先生も協力してくれた。同校は若い先生が多く、さまざまな活動で中軸となって動いているが、それをみんなでフォローする態勢も整っているのだ。
 それを支えているのが、「私はなんでもOKの校長」という柔軟な香城校長の姿勢だ。「空き教室を進路指導室にしたい」「情報処理室で買い換えた古いパソコンをそこに置きたい」という白木先生の希望も、すぐに実行に移した。また、進路指導主事を3年生ではなく1年生担当の若手の特別活動の先生に任せている。「受験があるから、進路指導主事は必ず3年生、というのはおかしいんじゃないか」という理由からだ。進路学習と道徳・教科を結びつけた1年時からの活動は、生徒に学習意欲を持たせるために不可欠だという。
 こうした変革が実を結び、生徒たちは将来の夢と自分の進路を明確に持てるようになってきている。紹介した「宇宙関係の仕事に就きたい」という生徒も、最初は漠然と「外国に行きたい」としか考えられなかったのが、道徳や教科の授業も含め、さまざまな場面で将来を考えるうち、明確な目標となってきたという。
写真
▲写真2 みんなの意見をもとにして、いちばん心に残ったことを紙に書き、黒板に貼る。
こうした作業を通じて、他人の価値観を取り入れることが実践される
 キャリア教育でいちばん大切なのは、夢を持てるようになったそのあと。目前の進路希望が実現しようがしまいが、夢を持ち続けて前向きに生きていく姿勢を養うことだと白木先生は言う。
 「夢はあるけれど、現実には学力的、経済的に第一希望の進路に進むのが無理な場合もあります。そこで夢をあきらめるのではなく、夢を実現するためのバイパスはいろいろあって、そのために第一の選択、第二の選択があるのだという意識を持たせることが大切なのです」
 2年間の実践を通して、道徳を中心とした横断的な指導の有効性を実感した香城校長は、これまで設けていなかった道徳主任を、新年度から設けることに決めた。北星中のキャリア教育がどのように進化していくか、注目していきたい。


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