ベネッセ教育総合研究所
特集 変わる高校入試に中学校はどう向き合うか
●アンケート概要 調査時期/2004年6月 対象/全国の『VIEW21』モニター中学校教師100人 調査方法/郵送による自由記述式アンケート
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第2部 レポート
変わる高校入試に、中学校はこう向き合う
モニターアンケートにみる中学校現場の現状と対策

 高校入試の変化を、中学校現場ではどのようにとらえているのだろうか。編集部では今回の企画にあたり、中学校の先生方を対象に高校入試に関するアンケート調査を実施した。その結果、多くの先生が高校入試に新しい動きが表れていることを実感しており、対策に乗り出していることがわかった。


出題の量は変わらない。
しかし問題の質が変わってきた
問題を解く過程を重視する出題が増えてきた
 高校入試の変化は、中学校現場の先生方も実感しているようだ。アンケート調査によると、80.0%の先生が「高校入試は変化してきている」(図1)と答えている。
図表
 その内容を見てみると、出題量については80.0%の先生が「変わらない」と回答しているが、「入試の変化は新教育課程にそった内容になっていると感じるか」という質問に対しては68.6%の先生が「感じる」と答えている(図2)。
図表
 先生方が感じている高校入試の変化とは、問題の量の変化ではなく、質の変化であることがわかる。
 具体的な声を拾ってみよう。
 新潟県の社会科の先生(48歳・男性)は、「問題自体はやさしいのだが、社会科についての複合的な知識を問う問題や、簡単な計算問題などの数学的な要素を含んだ問題が出題されるようになっている」と感じている。
 高校側がこうした教科や単元・分野を超えた問題で測りたいのは、生徒の「思考力」や「表現力」だ。先生方も、「『表現』であるとか、『問題を解く過程』を問う問題が多く出題されている」(高知県・39歳・女性)、「単に解答を要求するものではなく、その思考過程を問うものが多くなった。また実生活や実社会に関係する内容の設問が増えた」(栃木県・42歳・女性)、「記述資料からの読み取りが多くなり、単なる暗記では対応できない」(青森県・51歳・男性)と感じている。


複合問題への対応力を授業でつけさせるのが難しい
 では、このような入試傾向の変化に対して、中学生を指導する先生方は、どのような点で難しさを感じているのだろうか。
 三重県のある先生は「基礎・基本からの出題や応用・発展からの出題など、問題のバランスを工夫しているのはわかるが、大半の受験生には解けないような難問も出るため、発展学習にどこまで取り組ませたらよいのか、現場は迷っている」(49歳・男性)と、内容が基礎から応用まで多様になってきた入試問題への対応の難しさを語る。また秋田県の先生は、「複合的な問題に対しては、基礎・基本の定着だけではなく応用力が必要となるが、授業だけではそれを十分にカバーできない」(46歳・男性)と言う。
 さらに、最近増加している前期入試(特色化選抜)については、次のような声もあった。
 「選抜方法として、高校によっては、生徒にプレゼンテーションのようなことをさせるところもあり、どこまで中学校が指導しなければならないのかは疑問である。また、前期入試で行われている実技試験は、何を基準に合格・不合格が決まるのか知りたい」(群馬県・女性・46歳)
 そうした課題に戸惑いを感じながらも、中学校現場では、新たな対策に着手している。その対策は、三つに大別される。
(1)入試情報を収集して、分析・発信を行う。
(2)変わる入試問題に対応した指導を行う。
(3)職業観・進路観育成で意欲向上を図る(キャリア教育の観点)。

 以下、その実践例をアンケートから紹介しよう。


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