ベネッセ教育総合研究所
特集 学びに向かう集団づくり
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教師が一緒に話し合い行動することで課題を共有
 そんななかで中央中学校がまず着手したのは、教師間の人間関係の構築だった。教師と生徒、生徒同士の人間関係を築く礎として、まず最初にそこを優先したのだ。きっかけは山形県のある中学校を訪問したことだった。その中学校はかつては荒れた学校だったが、短期間で建て直しに成功していた。そこで導入していたのが、茨城大教育学部講師の笠井喜世氏が提唱する「テトラS」という教師間の連携の手法だった(図1)。そこで、中央中も、テトラSを取り入れることにしたのだ。
 ▼図1 テトラSによる学校再生のサイクル

図版
▲評価まで到達し、目標が達成されたと班会で認められたときは新しいサイクルに入っていく。
※テトラSの詳細はhttp://www.k-tetras.com/

 「テトラSでは、まず本校の教師35名を担当教科や学年、在籍年数などが偏らないように四つの班に分けます。各班では、先生方が生徒の生活態度や学習態度で問題だと感じていることを書き込んだ『現状把握カード』をもとに、なぜそうした問題が起きているのか、問題解決のためにはどのような手法が有効かといったことを話し合っていきます。そして問題解決に向けての目標設定と具体的な取り組みを各班ごとに決め、実行に移していくのです」(中川校長)
  「授業が始まっても、学びに集中できない生徒が目立つ」という課題がある教師から提起されたとする。班のメンバーは「休み時間と授業中のメリハリがついていないことが理由ではないか」と原因を探っていく。そこで「生徒が授業に集中できる環境をつくる」という目標を立て、「教師は早めに教室に行き、授業開始のチャイムと同時に授業を始められるようにする」「授業開始の礼は、全員がそろってからにする」など具体的な取り組みを決め、実践する。効果のあった手法については、月1回の全体会で全教師にフィードバックされる。
  このテトラSが導入された当初は、「ただでさえ忙しいのに、なぜさらに業務を増やすのか」と消極的な態度を見せる先生も少なくなかった。しかし中川校長は「ほかの業務を精選してでも、テトラSにはしっかり取り組んでください」と指示を出した。
  確かにテトラSでの個々の取り組みは、小さなものであったが、小さな成果の積み重ねによって、やがて学校全体の生徒指導のノウハウが蓄積されていった。何より大きいのは、ばらばらの方向を向いて指導に当たっていた先生方が、一緒に話し合い、行動するなかで、問題意識を共有できるようになったことだ。教務主任の大野敬一郎先生は、「教師の世界は独立独歩の雰囲気が強いのですが『テトラS』が教師の垣根を取り払ってくれました」と話す。


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