5つの実践課題で学習指導力の向上を目指す |
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竹内小太衛校長は、上中中学校の学力向上フロンティア事業の特徴を、次のように話す。
「一般に研究事業というと、指定を受けた一部の教科や分掌の先生のみに負荷がかかる傾向があります。ところが本校の場合、全教職員で学力向上に取り組んでいます」
研究指定校になったことで、英語科と数学科に教員数の加配があった。だが桧鼻先生は、「英語科と数学科だけが力を注いでテストの点数を上げたとしても、それでは意味がない」と語る。
「ほかの教科の先生からすれば、『英語科と数学科は頑張っているな』で終わってしまいますからね。これでは学校全体の学習指導力の向上には結びつきません。ですから英数だけではなく、5教科を対象とした取り組みにしたのです」
学習指導力向上の研究のために、桧鼻先生は各教科に対して、次の5つの実践課題に取り組んでほしいという提案をした。
(1)単元評価テストの実施
(2)学習意欲、学習態度に関する実態把握
(3)数値目標の設定
(4)指導方法の改善と教材開発
(5)個々の生徒の学力の向上
「単元評価テスト」は、評価規準・指導計画に照らして、単元の始まる前に作成し、まず単元ごとに生徒に身につけさせたい指導目標を設定する(図1)。教師としては、単元評価テストを作成することによって、「この単元では、こんな内容の知識や技能を、このレベルで身につけさせる」というふうに目指すべきゴールが明確になり、授業の全体像を把握することができる。 |
▼図1 英語の単元の評価規準と指導計画 |
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そして、単元の終了後に単元評価テストを実施することで、どれだけの生徒が学習目標をクリアしているかの把握が可能になり(図2)、さらに目標に到達していない生徒への手立てもしやすくなるというわけだ。ちなみにこの単元評価テストのときには、同時にその単元についての生徒の学習意欲を測る意識調査も実施される。 |
▼図2 単元の評価テスト-指導と評価の一体化 |
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ただし「単元評価テストによって目指すべきゴールが明確になる」とはいうものの、桧鼻先生は「問題作成のレベル合わせが非常に難しい」と語る。単元評価テストの問題の難易度は、常に一定のレベルに保っておく必要がある。そうでないと前の単元と比べて生徒の学力が伸びているのか落ちているのか、テストの点数によって比較することが不可能になってしまうからだ。
「もう一つ難しいのが、上位層、下位層の生徒への配慮です。テストの問題のレベルをあまり高くし過ぎると、下位層の生徒の点数がぐんと下がります。やはり生徒は点数を気にしますから、学習意欲の向上につながりません。かといってレベルを下げすぎると、上位層の生徒の挑戦心を止めてしまうことになります。レベルの落としどころに、いつも苦労しますね。英語科では現在、到達度を測る基本的な問題と、少し発展的な問題の両方をテストの中に取りいれています。単元評価テスト問題の作成は、教師の力量が問われますね」
こうした「単元評価テスト」や「学習意欲に関する調査」はセットで実施され、「単元評価テストの通過率:1年生90%以上」といったふうに、「数値目標」を設定することが課せられている(図3)。教師は、単にテストや意識調査を実施すればいいというわけではなく、数値目標をクリアすることも求められているというわけだ。 |
▼図3 数値目標の設定例(英語科) |
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