学力差が出やすい英・数で習熟度別授業を取り入れる |
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さて、「個々の生徒の学力の向上」を目的に、英語科と数学科で取り入れられているのが、習熟度別授業だ。数学については、習熟差が大きく開く2年生の「連立方程式」「一次関数」「図形の証明」の三つの単元で、基礎、標準、発展の三つの集団に分けて習熟度別授業を行っている。
一方、英語で習熟度別授業を実施しているのは、2年生と3年生。04年度は2年生の場合、各単元の単元終了後に補充・発展的なかたちで発展と基礎に分かれて習熟度別授業が行われた。また3年生は、4月に実施された実力判断テストの成績をもとに、生徒が選択し、全授業について発展と基礎に分けた習熟度別授業を展開した。
英語科では習熟度別授業以外にも、上位層の生徒には海外の中学生との交流や、各種コンテストへの参加や英検準2級受検を奨励している。03年度には、中3生の11%が英検準2級を取得する成果が出た。一方で基礎基本の定着度が低い生徒には、課題のレベルを工夫したり、個別指導を実施するなど、個々の生徒の実態に合わせたきめ細かい指導を行っている。成績下位層の生徒への手立てを行いつつ、上位層の生徒の力を伸ばす工夫をしているわけだ。
ただし桧鼻先生は、習熟度別授業を導入する際には、クリアすべきいくつかの条件があるという。
「まず大切なのは、教師が生徒の習熟状況を正確に把握したうえで指導計画を作成すること。例えば基礎コースの場合、英語を話せない生徒ばかりの集団になります。そのため基本的な語彙力だけでも対話が成り立つようなワークから始めて、徐々にステップアップしていけるような指導計画を立てる必要があります」
もう一つの条件は、習熟度別授業を取り入れても、揺るがないだけの人間関係がクラスの生徒の間で成り立っていること。
「基礎コースで学ぶ生徒を馬鹿にするような雰囲気だと、習熟度別授業は絶対にうまくいきません。生徒の習熟状況に合わせて、宿題の量や難度を変えることがあるのですが、『あいつばかり宿題の量が少なくてずるい』といった発言が出てくると、やはり個別指導は難しくなります」
そのため上中中学校では、クラスの集団づくりを非常に重視している。文化祭や体育祭といった学校行事はもちろんのこと、生徒会が主体となって、クラス対抗の似顔絵コンクールや学習態度コンクールなどさまざなコンクールを開催。生徒が一つになって、行事に取り組む機会を数多く設けている。またユニークなのは、各教室の掲示物の多さだ(写真1)。生徒一人ひとりの今月の目標、調べ学習の成果を発表したものなど、どのクラスも生徒たちが作成した掲示物であふれている。これらは、クラスへの愛着心を高めることにつながっている。 |
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▲写真1 クラスには生徒の思いがこもった掲示物が並ぶ |
上中中学校の学力向上フロンティア事業は04年度で終了した。英語が県内でもトップレベルの成績を収めるなど、実践の成果は着実に表れつつある。
「05年度以降も、生徒への学習指導力を高めるための取り組みは全教科をあげて継続していく予定です。本校は、すべての生徒の能力を伸ばしていける学校でありたいと思っています」(竹内校長) |
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▲写真2 英語の授業。生徒、教師ともに目的が明確な授業が活発に行われる |