特集 「考える力」を引き出す授業―理数教科からのアプローチ―

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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生徒主体の授業には緻密な授業計画が不可欠

 とはいっても、もちろん、生徒の意見に授業のすべてを委ねているわけではない。神谷先生は、授業前、生徒から発せられそうな意見を細かく予想し、緻密な指導案をつくり上げて臨む(図2)。そこには、「本時の目標」や、評価の指針となる「評価基準」、さらに「評価目標達成」のための具体的な指導法が記述されている。先の一次関数の授業では、評価がCの生徒をBに引き上げるために、「具体的な操作をさせながら、乾電池の数とおもりの位置を確認させる」という指導法が掲げられている。
図2 指導計画書
図2
神谷先生が授業の前に作成する指導計画書。生徒の自由な意見を受け止めながら授業を展開するためには、綿密な計画が不可欠だ
 事前の「板書計画」(図1)も大切だと神谷先生は話す。
 「授業の始めから終わりまでの“要点”を生徒たちに示すのが板書です。それだけに、思いつきではなく、計画的に行わなければなりません」
 要点がまとめられた板書は、授業の流れを見渡し、おさらいをするのにも最適だ。神谷先生は、授業の最後に要点となる箇所を少しずつ消して、「ここには何が書いてあった?」と繰り返し問いかけながら、生徒に授業を振り返らせている。
 こうした緻密な計画に裏打ちされた授業を通し、生徒たちは直観力と論理力を養い、主体的に学ぶ姿勢を身につけていく。
 「もちろん、数学で学んだ直観力や論理力はほかの教科にも生かされます。もっと広く考えれば、社会生活においても、さまざまな問題を乗り越えるための“生きる力”になると考えています」
 机上の学習に偏ることなく、社会生活にも通じる能力を育て上げていく。神谷先生の授業は、数学教育がもつ可能性を改めて教えてくれる。


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