教育現場の挑戦 [学力向上の取り組み]静岡県浜松市立蜆塚中学校

静岡県 浜松市立蜆塚(しじみづか)中学校

浜松市は、静岡県西部に位置し、2005年7月の合併で人口約81万人の都市となった。蜆塚中学校がある浜松市蜆塚は、縄文時代後期のものとされる蜆塚遺跡もある。蜆塚中学校は02年度より3年間、文部科学省の学力向上フロンティアスクールの指定を受け、生徒の自己教育力の育成を目指した教育活動を行ってきた。

下村哲生

▲校長 下村哲生先生

生徒数 328人
学級数 10学級
所在地 〒432-8018
静岡県浜松市蜆塚2-15-1
TEL 053-453-0171
FAX 053-453-0172
URL http://www.city.hamamatsu-
szo.ed.jp/shijimizuka-j/

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
  PAGE 1/5 次ページ

教育現場の挑戦  学力向上の取り組み

静岡県 浜松市立蜆塚(しじみづか)中学校

生徒の学習意欲を高める評価方法と学習機会を導入

 KEY POINTS 実践のポイント
 1 生徒自身が学習の定着度を把握できる評価方法を導入している
 2 学習の定着度に応じて、主体的に取り組む校内検定試験を実施している

自分から進んで学びに向かう姿勢を身につけさせたい

 蜆塚中学校は、近隣に静岡大浜松キャンパスや市立博物館・市立美術館などがあり、浜松市内でも有数の文教地区に位置している。保護者の教育に対する関心は高く、生徒の学力や学習意欲も豊かである。
 だがそんな蜆塚中学校でも、やはり課題がある。それは「自ら求めて学び、高まろうとする意欲が少し希薄になってきている」(下村哲生校長)ということだ。
 「問題を解いていて壁にぶつかると、すぐに教師に救いを求めようとします。本当は粘り強く問題を解くプロセスを経験することこそが、最も大切なのですが……。いま本校が重視している教育課題の一つです」(下村校長)
 小学校から中学校、そして高校と続く学びの連続性における中学校の役割として、「中学校では子どもに自ら学びに向かう姿勢を身につけさせることがとくに重要」と蜆塚中学校研修主任の田中研一先生は話す。
 「小学校の先生方は子どもたちをきめ細かく指導してくださいます。中学校でも同じスタンスで子どもたちと接していると、子どもたちは高校に進学した途端に自立することを求められます。そうなると、適応できずに学力不振を起こし、挫折する子どもも出てきてしまいます。
 ですから、たとえきめ細やかな指導がなくても、自分で学びに向かって切り開いていく力を、中学校段階で身につけておくことが必要だと思うのです。いまの生徒にそうした力が足りないとするならば、なおさらのことです」
 蜆塚中学校の教師は、いつも生徒に「早く『勉強』を卒業して、『学習』ができるようになろう」と語りかけているという。勉強という言葉は、「勉めることを強いられる」とも解釈できる。その状態を脱して、早く自ら学びへと向かうようになってほしい。そんなメッセージを、折にふれ生徒たちに伝えているのだ。
 だが、蜆塚中学校の生徒に対する学びへの誘いは、単なる言葉かけのレベルには終わっていない。いくつもの具体的な手立てを講じているのだ。


  PAGE 1/5 次ページ