教育現場の挑戦 [学力向上の取り組み]栃木県佐野市立葛生中学校

栃木県 佐野市立葛生(くずう)中学校

葛生は栃木県南部に位置し、中生代の葛生原人の骨や縄文時代の遺跡などでも知られる町。町村合併で、2005年に葛生町から佐野市となった。葛生中学校は1947年(昭和22)年の創立。02年度より3年間、学力向上フロンティアスクールの指定を受け、「自ら学ぶ人」の実現を主題に研究を続けてきた。

神山 学

▲校長 神山 学先生

生徒数 205人
学級数 7学級
所在地 〒327-0507
栃木県佐野市葛生西3-4-1
TEL 0283-85-2169
FAX 0283-85-2196
URL http://www.sunfield
.ne.jp/‾kuzuuchu/

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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教育現場の挑戦  学力向上の取り組み

栃木県 佐野市立葛生(くずう)中学校

「満足感の意識調査」による生徒の声で常に授業を改善

 KEY POINTS 実践のポイント
 1 「学習カード」で毎時間の生徒の声を集め、すぐに授業に生かす
 2 「満足度の意識調査」で生徒の満足度を定量化し、「授業改善シート」で次の改善に取り組む
 3 「垣根のない教科部会」で、教師全員が授業改善に取り組む

教師が気づかない点に生徒の不満足の原因がある

 生徒の学習意欲を高めることが確かな学力につながる――その考えにはだれもが賛同するだろう。しかし、数値化が難しい「意欲」を高める方法を考えるのは簡単ではない。その答えを「生徒の授業満足度」に求め、「それを分析して、次の授業に生かす」ことで解決し、成果を上げているのが、佐野市立葛生中学校だ。
  2002年度から文部科学省の学力向上フロンティアスクールに指定された葛生中学校は、研究主題を「『自ら学ぶ人』の実現・一人一人の満足感を高める指導法の工夫・改善と学習環境の整備を通して」と定めた。葛生中学校の生徒が「素直で基礎的な学力は比較的身についているものの、自分の考えを発するのが苦手であること」が設定の背景にあった。これが、教育目標である「自ら学ぶ人」を育成していくうえでの課題となった。
  そうして実践・研究を積み重ねていく中で、ある大きな「発見」があった。教務主任の野村隆一先生は次のように振り返る。
  「最初は、授業がわかることが一番満足度につながると考えていました。ところが、そうでない事例があることがわかったんです」
  それは、数学の習熟度別の授業でのちょっとしたアンケート結果だった。比較的易しい「式の計算」に比べて、難しい「平方根」では、予想通り「ベーシック」クラスの「わかった」割合が低かった。しかし、満足度を見ると、ほかのクラスと大きな差はなく、「わからないけれど満足」している生徒が少なからずいたのだ。
  「びっくりしました。『わからないけれど満足』とはどういうことかと。これは、生徒にきちんと聞くことが必要だと気づきました」(野村先生)
  この気づきが、後述する「満足感の意識調査」の実施へと結びついていく。その背景には、神山学校長自身の学生時代の経験もあった。
  「数学の先生がいつも板書の右側に立って説明していたので、私の席からは書いてある字が見えづらかったんです。『たまには左側に立ってほしいな』と思っていましたが、なかなか言い出せません。そのうち授業がわからなくなり、数学嫌いになってしまいました。そんな自分の苦い経験から、生徒の不満足の原因には教師が気づかない点もあるのではないかと考えました」(神山校長)

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