VIEW21 2006 SPECIAL INTERVIEW 今、問われるのは「学校力」!

小島弘道

▲筑波大大学院人間総合科学研究科教授

小島弘道

おじまひろみち◎東京教育大大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。神戸大、奈良教育大、東京教育大を経て筑波大へ。専攻は学校経営学。『21世紀の学校経営をデザインする(上・下)』(教育開発研究所)、『教務主任の職務とリーダーシップ』(東洋館出版社)など著書・論文多数。

※本文中のプロフィールはすべて取材時(06年3月)のものです
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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VIEW21 2006 SPECIAL INTERVIEW

今、問われるのは「学校力」!

筑波大大学院人間総合科学研究科教授 小島弘道

学校を取り巻く社会的環境が変化し、
学校そのものにも従来の枠を超えた新しい展開が
求められるようになってきた。
学校改革の羅針盤として今、「学校力」という考え方が
注目を集めている。

「学校力」の五つの要素を学校づくりの目安にする

――小島先生は、良質な学校経営を実現するための学校づくりの指針として、「学校力」という概念を提案しています。この「学校力」とはどのようなものでしょうか。

小島 多くの学校は、自分の学校が良い学校であるかどうかを検証する手段として、多岐に渡る評価項目を設定して、学校評価に取り組んでいます。しかし、評価項目が複雑だと、かえって学校づくりの方向性が見えなくなります。
  そこで、学校の魅力を構成している要素を見えやすくするために、要素を五つに大別し、その総体を「学校力」と名づけたのです。学校づくりの目標や方向性を定めたり、現状や課題を分析したりするときに、学校力の概念は一つの目安にできると思います。
  人によって分け方は異なるでしょうが、ひとまず私は「学力」「指導力」「経営力」「安全・危機管理」「スクールアイデンティティ(SI)」の五つから学校力が成り立つと考えました(図1)。
▼図1 学校力を構成する5つの要素
図1
  「学力」とは教科学力だけにとどまるものではなく、学校教育で身につけるべき広い能力のことを指します。「指導力」では授業力や専門的知識、児童・生徒理解といった教師個人の力量とともに、ほかの先生と協働しながら学年運営や校務分掌組織の運営を行うことができるチーム力も求められます。また「経営力」とは、地域や保護者の意向などを受け止めながら学校としてのビジョンを示し、実際に運営していく力のことです。
  「安全・危機管理」は、子どもが被害者となる事件が多発する中で、特に重要性を増している要素です。また「スクールアイデンティティ」で求められるのは、「あの学校は子どもの基礎学力をきちんと育ててくれる」と周囲から評価されるといったように、その学校ならではのイメージや特徴を確立することです。

――スクールアイデンティティの確立は、学校の特色づくりを進めていくうえで、欠かせないことですね。

小島 どの学校も特色づくりについては、苦労されていると思います。これまで小中学校段階においては、教育内容や質に学校間の違いがないことが好ましいとされてきたわけですからね。
  私は、学校が特色づくりを行う際、その学校が抱えている課題が、逆に強みになる可能性を秘めていると考えています。例えば、「クラスの荒れ」という問題に悩んでいる学校が、クラス担任に責任を押しつけることなく、教職員全体で子どもの状況を把握して指導する態勢を築いたとします。これが成果を上げると、「あの学校は、教師のチーム力によって子どもを育てようとしている」と周囲から評価されるようになるというわけです。
  このように「学校力」の向上は、学校が今ある課題と向き合い、それを乗り越えていく中で形になっていくものなのです。

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