特集 学校力を生み出す学校評価
東京都 葛飾区立中川中学校

1947年開校。学区には昔ながらの下町の雰囲気が色濃く残り、地域住民のつながりが強い。そうした土地柄を生かし、生徒が高齢者の家などを訪れる「ふれあい訪問」や保育園での実習をはじめ、特に地域に開かれた教育の推進に力を注ぐ。

菅正

▲校長 菅正先生

生徒数◎220人
学級数◎6学級
TEL 03-3692-4260
FAX 03-5698-1748
〒124-0014
東京都葛飾区東四つ木1-3-1
URL http://www.kyouiku.katsushika.
tokyo.jp/jnakagaw/index.htm


VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【事例2】実態把握から始める学校評価

生徒の学力層と学習意識の相関を捉え授業改善に結びつける

東京都  葛飾区立中川中学校

「学校力」の核となる授業力。その授業力に関する評価項目を設定するうえで、格好の材料となる実態把握が学力調査だ。中川中学校は2005年度に学習到達度および学習意識の二つの調査を実施。その相関関係を分析し、従来の授業改善の方向性を軌道修正した。

生徒の実態を正確に把握し課題を導き出す

 2005年度、中川中学校の授業改善の取り組みは大きく変化した。そのきっかけは、同年4月、葛飾区教育委員会が区内の全中学校で実施した「確かな学力の定着度調査」だ。
  この調査は、国語、数学、英語について、基礎学力の定着度を測る「学習到達度調査」および学習への意欲や態度を調べる「学習意識調査」の二つで構成される。表面上の学力だけでなく、その根本にある意識面との相関関係を分析することで、生徒の実態を正しく把握するのがねらいだ。
  6月、中川中学校に届いた調査結果には、二つのいびつな形を描いたレーダーチャートが示されていた。学習意識調査では、「心の豊かさ」「問題解決力」「自ら学ぶ力」「学びに向かう力」をはじめ、すべての項目で区平均を大きく上回る理想的な結果だった。しかし、学習到達度は全く逆の結果を示していた。国語は区の平均に近かったものの、数学と英語は多くの観点で区の平均を下回っていたのだ。菅正校長は結果を次のように考察する。
  「本校の学区は昔ながらの下町の雰囲気が残り、地域住民のつながりが強い。更に、三世代同居世帯が比較的多く、家庭と地域、そして教師が一体となった教育環境が整っています。意識面の高い評価はその賜物でしょう。一方、教科学力に関しては、これまでも授業改善を進めていましたが、まだ検討の余地があることをはっきりと認識できました」
  中川中学校では調査結果を受け、まずは、学年や教科ごとの課題を校内で共有した。そのうえで、9月には、分析を請け負った外部の専門スタッフを招いて、各教科の指導の改善を話し合う校内研修会を実施。いくつか明確な課題を導き出した。
  その一つは、他学年に比べて全体的に低かった2年生の学力だ。成績を上位・中位・下位の3層に分けて詳しく分析したところ、数学は学力の二極化が顕著、英語は区平均に比べて上位層の人数そのものが少なく、全体的に低レベルだったことが明らかになった。
  また、全学年とも家庭学習の不足が浮き彫りになった。「家庭学習をほとんどしない」という生徒の割合は区平均に比べて高く、それが学力停滞の要因と考えられた。
  「詳細な分析により、学年や成績のレベルの違いに応じた課題を把握できました。もちろん課題だけではなく、『高齢者や困っている人に進んで声をかける』という項目で肯定的な回答が多いなど、生徒のよさを改めて感じられたことも大きな成果でした」

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