特集 学校力を生み出す学校評価

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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宿題の出し方を工夫し学習習慣の定着を図る

 こうした分析の結果、学校では次の三つの研究の方向性が共有された。
1 宿題の出し方を考え、家庭学習時間の確保を図る指導法
2 筋道を立てて考える生徒の育成を図るための指導法
3 目標を持たせ、失敗を恐れず挑戦する生徒の育成法

  家庭学習の充実は、最も重視した課題だ。教務主任の岡宗秀和先生は、家庭学習に対する生徒の意識をこう分析する。
  「成績上位層は、自主的に家庭学習を進めています。中位層では不得意な教科になると学習を避ける傾向にありました。一方、下位層では、やる気のある生徒が少なくありませんが、何を勉強すればよいのかわからない、実際に取り組んでも解けない、質問できる人がいないといった要因で、結果的に家庭学習をしないケースが目立ちました」
  実は、中川中学校では調査前から家庭学習を促す活動に取り組んでいた。以前は、子どもたちの負担を考えて宿題を控えめにしていたが、保護者へのアンケートで「小学校時代は宿題があるから机に向かっていたのに」と、宿題が少ないことを心配する声が寄せられたため、05年4月から教科担任の宿題とは別に、漢字や英単語の書き取り、計算練習など、毎日約20分で終わる量の基礎的な内容の宿題を学年統一で課すことにしていたのだ。しかし、教科担任の宿題と重なって負担が過大となったり、内容が重複したりするという問題も生じていた。そこで、今回の調査で家庭学習の課題が改めて浮き彫りになったのをきっかけに、全教師に宿題に関するアンケートを実施し、抜本的な見直しを行った。
  「学年と教科担任とが宿題の分量や内容を話し合い、生徒が無理なく家庭学習を進められるようにしました」(岡宗先生)
  その結果、生徒からは「宿題に取り組みやすくなった」という声が寄せられた。また、生徒が日によっては宿題に追われ、自分の勉強にまで手が回らないことがあったが、その懸念も減少した。
  「家庭学習のほか、自主学習へのサポートとしては、ノートの取り方の指導も行っています。単に板書を書き写すのではなく、自分が気づいたことを盛り込む方法などを教え、復習に役立つようにしています」(岡宗先生)
  また、定期テスト1週間前は部活がないため、本来、生徒は早い時間に帰宅するが、家で何をすればよいのかわからないという声が多かった。そこで、この時期は「学習週間」として、放課後にテスト範囲の補習を行っている。学級委員を中心に組織された委員会が自主的にテストの予想問題を作成する姿も見られるという。また、学力層の違いを意識した取り組みとして、国語と数学で少人数授業を実施。岡宗先生がその効果を強調する。
  「少人数のため、生徒の発言の機会が増え、授業への参加意識が強まります。更に、机をコの字型や円形に並べ、生徒が向き合う形態で授業を進めるため、常に緊張して授業に臨めますし、発表すればみんなが聞いてくれているという実感が持てます」
  少人数授業に対する生徒の満足度は高く、「先生と話す機会が増えた」と喜ぶ声もある。教師にとっても、一斉授業に比べ生徒一人ひとりの理解度にも目が行き届くなど、指導上のメリットも大きい。
  また、生徒の学習意欲を高めるために積極的に行っているのが「励ます授業」だ。「総合的な学習の時間」などを利用し、漢字や英単語、計算問題などのコンテストを実施してきた。また、漢字検定や数学検定、英語検定などにも積極的に挑戦させ、事前に補習を行い、受検を支援している。
  「検定は目標を持ち、達成感を抱かせるのが一番のねらいです。家庭にも通知し、概ね高い合格率となっています」(岡宗先生)

▼図1 実態把握と計画立案の流れ
図1
「確かな学力の定着度調査」の結果は、外部の専門スタッフを招いた校内研修会で検証。3つの研究の方向性を確認した。更に、調査で表面化した良い面や課題に対する計画を立案し、最終的な教育目標「自ら学ぶ生徒」の育成につなげる

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