平田 私が行う表現の授業がスムーズに進まないクラスでは、子どもたちは答えが一つしかないと思っていることが多いんです。演劇をつくる過程でも、私の顔色をうかがい正解のセリフを探ろうとする。それが正解かどうかを私が言うまで、次に進めないのです。逆にスムーズに進むクラスの子どもたちは、答えはいろいろあることを経験的に知っています。この違いは、普段、教師に多様な意見を認める習慣があるか否かによって生じていると思います。
秋田 正解・不正解にかかわらず、いろいろな子どもが多様な考えを出さなければ、対話も学びも深まりません。一問一答式で答えられる子だけを指す授業では、ほかの子が離れてしまいます。教師がコミュニケーション教育をすんなりできない理由には、指導法をノウハウとして伝えにくいこともあります。型を真似ることはできますが、「対話」をしようという気持ちを持たなければうまくいかない。
平田 子どもと同じ目線で話すことが大切ですね。ただし、教師全員に高度なコミュニケーション教育を求めるのは難しいので、コミュニケーションの専門家を養成し、地域に1人でも配置すれば状況は変わるのではないでしょうか。欧米の多くの国には「ドラマ・ティーチャー」という教師がいて、表現教育をする一方、ほかの教科をサポートします。例えば、化学の教師に依頼されて科学者の役を演じたりしながら授業をドラマに仕立てる。そうした専門家の養成は有効でしょう。
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