Web限定コンテンツ 演劇を通して豊かなコミュニケーションを育む

■平田オリザ

(ひらた・おりざ)

プロフィール

 

■埼玉県
富士見市立水谷中学校

校長●阿部哲生先生
生徒数●194人(06年9月現在)
学級数●6学級
〒354-0011
埼玉県富士見市大字水子3117
TEL 049-254-5335
FAX 049-255-1201
URL http://www.city.fujimi.saitama.jp/
school/mizuchu/index.html

 

■富士見市民文化会館

キラリ☆ふじみ

〒354-0021
埼玉県富士見市大字鶴馬1803-1
TEL 049-268-7788
URL http://www.city.
fujimi.saitama.jp/culture/

VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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2006年9月号 Web限定コンテンツ

演劇を通して豊かなコミュニケーションを育む

本誌特集の巻頭対談に登場する劇作家・演出家の平田オリザさんは全国各地の小・中学校で演劇のワークショップを行なっている。その方法論は、2002年度から採用された中学2年生の国語教科書にも掲載され、年間30万人以上の子どもたちが教室で演劇を創るようになっている。

人とのかかわり方や話し方 言葉に興味をもってほしい

 「宇宙から来た○○です」

転校生役の生徒の自己紹介に、観客の生徒たちからどっと笑いが起こる。2006年9月中旬、平田オリザさんが行ったワークショップ『対話劇を創ろう』の一幕だ。授業を受けたのは、埼玉県富士見市立水谷中学校3年生の生徒たち。2クラス60人余りが5人ずつのグループに分かれ、朝の教室で交わされる教師と生徒、転校生の会話を短い劇にして発表した。

 富士見市では4年前から、富士見市民文化会館キラリ☆ふじみの事業として、希望する市内の中学校を対象に演劇の出前授業を行っている。毎回講師を務める平田さんは、このキラリ☆ふじみの芸術監督でもある。水谷中学校では国語の特設授業としてこのワークショップを導入。今年で3度目の実施となる。

 「本校の生徒たちの多くは小学校から同じ顔ぶれで学校生活を過ごし、人間関係やコミュニケーションの広がりを持ちにくい環境にあります。この授業をきっかけに、子どもたちが他人とのかかわり方や話し方を振り返り、言葉に対する興味を持ってくれればよいと思っています」

 国語科を担当する内海幸一郎先生は、この授業に対する期待をこう話す。

4時間で台本づくりと発表

 授業は、1~4時間目まで、午前中いっぱいかけて行われた。

 

【1時間目+2時間目】レッスン(ウォーミングアップ)

 1時間目と2時間目は、別々の講師による授業を2クラスが交代で受けた。1クラスは平田さんの『対話のレッスン』。生徒たちは見本となる台本を渡され、それを部分的にアレンジして発表。台詞の言葉を少し入れ換えるだけで、台本が面白くなることを学んだ()。もう1クラスは、劇作家で演出家の明神慈(みょうじん・やす)さんによる、『リラックスして演劇を発表するためのレッスン』。多目的教室に移動し、マットの上で身体の各部位を動かしながら、普段は意識しない身体のバランスや力の入れ方の感覚をつかんだ。

例えば、冒頭の台詞は、見本の台本では「長野から来た○○です」とある。4時間目の発表で、ユーモア溢れる台詞に変わった。

写真1

写真1:平田オリザさん『対話のレッスン』授業風景

【3時間目】台本づくり

 演劇表現の要素となる言葉と身体のウォーミングアップができたところで、3時間目は各自の教室で、台本を創作する作業に取りかかった。

 「外国からの転校生っていう設定にして英語のセリフもいれようよ」

 「○○君は居眠りしている生徒役ね」

 各グループは時間ギリギリまで、さまざまなアイデアを出し合った。

 

【4時間目】発表

 4時間目はいよいよ2クラス合同による発表の時間。多目的教室に集まった生徒たちは、恥ずかしさや緊張を滲ませながらも、工夫を凝らした演技を精一杯披露。周りからは笑い声やかけ声がたびたび起こり、場は明るい雰囲気に包まれた。

 「子どもたちは、創作過程でたくさん言葉を交し合い、他のグループの新鮮なアイデアに刺激を受けていました。普段の国語の授業に出てくる、詩や小説、説明文で学んできたことを引き出しながら台本づくりをしており、生きた時間になっていたと思います」(内海先生)

写真2

写真2:創作した対話劇を発表する生徒たち

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