第2部 学力調査を活用した実践事例 [事例4]埼玉県 ふじみ野市立福岡中学校
VIEW21[中学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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「学習TEL」で学習意欲の向上を図る

 学力調査を通してもう一つ浮き彫りになった課題は、特に3年生(05年度2年生)の学習意欲や家庭学習時間が二極化していることだった。福岡中学校ではこれを緊急の課題と捉え、今回の研究では、成績下位層の学習意欲向上に重点的に取り組むプランが立てられた。
  「基礎学力の定着が不十分な生徒を各教科で1クラスあたり1、2名選び、学習状況や学力の変化に着目し、必要に応じて支援しています。この手法は、教師が実際に経験したモデルを参考にしたもの。全く勉強しなかったある生徒が何かのきっかけでやる気を出し、見違えるように成績が上がったのです。クラスメイトからは『あいつだけには勝てる』と思われていた生徒でしたが、だんだん成績が伸びてくると、ほかの生徒が危機感を持ち始め、クラス全体の勉強に向かう姿勢が向上していきました。生徒たちの間には、微妙な人間関係やライバル意識があります。下位層の生徒が動くと、全体が動くという波及効果があるのです」(山崎先生)
  支援対象に選ばれたのは、学習意識に関するアンケートで「勉強の仕方がわからない」「やる気が出ない」などと回答した生徒たち。そんな生徒たちを机に向かわせるために、最も大きなポイントとなるのが家庭との連携だ。しかし、こうした生徒の場合、さまざまな家庭の事情から、保護者の協力を得るのが難しいケースも少なくない。
  「塾通いをさせるなど教育熱心な家庭と、子どもの学力に全く関心を示さない家庭との差が広がっていると思います」(岡田先生)
  勉強に関心のない親子の目を学習に向かわせるにはどうしたらよいのか。試行錯誤の末に考え出したのは、担任だけでなく、各教科担任も家庭とコミュニケーションを深めていく方法だった。
  「『勉強、勉強って言わないで』『勉強なんてしたくない』と言う生徒たちを何とかしようとしているわけですから、単に宿題を増やすだけでは効果が上がりません。そこで、宿題を増やす代わりに、『学習TEL』という取り組みを始めることにしました。各教科の担当が『お子さんが頑張りましたよ』などと、学習についての電話を1日1人ずつかけるというものです。学校が家庭に電話をするのは、生徒が何か悪いことをしたときが多いものです。だからこそ、生徒の頑張りをきめ細かくフィードバックすることで、家庭の意識を変えていけると考えました」(山崎先生)
  もちろん、ただ褒めるだけでなく「今日、勉強の仕方についてお子さんと話をしたので、本人とよく話し合ってみてください」「お子さんがわからない分野がありますから、いつでも相談に来るように言ってあげてください」などと、生徒のやる気を起こさせるきっかけづくりに力点を置く。各教科の教師はチェックリストを作成し、選ばれた生徒に限らず、担当する生徒の保護者に電話をかけ、各家庭との連携を進めていく。
  更に、学期ごとに保護者に渡すシラバスも大幅に変更する計画だ(図3)。
  「今までのシラバスは、専門用語が多く文字がぎっしり詰まっていたので、ほとんどの家庭であまり読まれていなかったようです。そこで、難しい用語やカタカナ言葉は使わず、できるだけシンプルで簡単なものにします」(山崎先生)
  学校のホームページ上でもシラバスなどを積極的に公開し、家庭で取り組んでもらうための工夫を凝らしていった。
▼図3 新しいシラバス(例)
図3
上記が新しく作成しようとしているシラバスの例。学期ごとに作成し、どのようなことを学ぶのか、簡潔に記述している

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